ドイツ・テュービンゲン大学のAndreas Fritsche氏

 Basal-Bolusレジメン血糖コントロールに優れる一方で、低血糖を起こしやすいとの指摘もある。しかし、「同等のHbA1c低下を得る過程で生じる低血糖のリスク」は、混合型インスリン(Mix)の2回投与レジメンよりBasal-Bolusレジメンの方が有意に少ないことが昨年発表された臨床試験GINGER studyのpost hoc解析によって示された。この結果は、9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催されている第46回欧州糖尿病学会EASD2010)にて、ドイツ・テュービンゲン大学のAndreas Fritsche氏(写真)らが報告した。

 GINGER studyは、罹病期間が5年以上で、Mix2回投与レジメンで血糖コントロール不良の2型糖尿病患者310人を対象に、これまでの治療を継続した場合(Mix2回投与群;n=157)と、インスリングラルギン+インスリングルリジンによるBasal-Bolusレジメンに切り替えた場合(GLAR/GLU群;n=153)の効果と安全性を比較した52週間の多施設共同無作為化オープンラベル試験である。

 主解析の結果は昨年発表され、HbA1c改善効果はGLAR/GLU群の方が有意に優っていたことが明らかにされている(ΔHbA1c値:−1.31%±1.19% 対 −0.80%±1.08%、p=0.0001)。

 一方、低血糖の発現頻度はGLAR/GLU群の方がやや低率であったが、統計的有意差は認められなかった(1399.17±2424.24件/100人・年 対 1854.31±3694.83件/100人・年、p=0.12)。ただし、Mix2回投与群のなかでもインスリンアスパルトとNPHインスリンの30/70混合製剤が用いられていたサブグループ(n=63)では、特に低血糖発現頻度が高く(2468.39±4853.41件/100人・年)、このサブグループとGLAR/GLU群との間には有意な差が認められた(p=0.020)。

 そこで今回、Fritsche氏らは、試験終了時のHbA1c値と、この値を得る際に低血糖を伴う確率の分布を求めるために、負の二項回帰分析(negative binomial regression analysis)を行った。

 その結果、たとえば試験終了時のHbA1c値が6%とすると、グラルギンとグルリジンによるBasal-Bolusレジメンでの低血糖発現リスクは2000件/100人・年程度と推定されたが、Mix2回投与レジメンの場合は2700〜2800件/100人・年程度のリスクを伴うと推定された。さらにMix2回投与レジメンでも、アスパルト/NPHの混合製剤を用いた場合のリスクは4000件/100人・年近くになると推定された。

 以上の結果より、グラルギンとグルリジンによるBasal-Bolusレジメンは、血糖コントロール効果に優れるだけでなく、同じHbA1cの目標値を達成する上で生じる低血糖の発現リスクもMix2回投与レジメンより少ないことが示唆された。Fritsche氏らは、「Mix2回投与レジメンでコントロール不良な2型糖尿病患者には、安全性の面からもBasal-Bolusレジメンへの切り替えが推奨される」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)