東京女子医大糖尿病センターの坊内良太郎氏

 日本人の2型糖尿病患者において、診察時のHbA1cの変動は、平均HbA1c値とは独立した心血管疾患CVD)の予測因子である可能性が示された。9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催されている第46回欧州糖尿病学会EASD2010)で、東京女子医大糖尿病センターの坊内良太郎氏(写真)が発表した。

 ごく最近、いくつかの論文で、1型糖尿病患者において、HbA1c値の変動が細小血管合併症と大血管合併症のリスクに関連している可能性があることが報告された。坊内氏らは、2型糖尿病患者においてもこのような関連があるのかどうか、また、HbA1cの変動がどのようにCVDの発症に関係しているのかを明らかにするために、2型糖尿病患者におけるHbA1c値の変動とCVDの関係についてコホート研究を行った。

 対象は、成人の日本人の2型糖尿病患者で、推定糸球体濾過率(eGFR)が15mL/分/1.73m2以上で、HbA1cが年間3回以上測定でき、さらに12カ月以上フォローアップできた689人(女性295人、男性394人、平均年齢65±11歳)だった。

 HbA1cの変動は、全追跡期間中に定期的に測定したHbA1Cの個人内SDと定義した。HbA1c値は、JDS値に0.4を足した国際標準値で表記した。主要評価項目は、脳梗塞と脳出血、心筋梗塞、冠動脈血行再建術が必要な狭心症を含むCVDと定義した。

 試験の結果、平均3.3年間の追跡期間の間(1.0〜6.3年間)、患者1人当たり26±14回分のHbA1cの測定値が得られ、61人の患者でCVDのエピソードを認めた。SD-HbA1cは、平均±SDは0.65±0.42、中間値は0.54(範囲0.04-2.66 )、平均HbA1cは7.8±1.2%だった。

 SD-HbA1cが中間以下の患者(344人)とSD-HbA1cが中間以上の患者(345人)のそれぞれのCVDの5年間累積発生率を見たところ、SD-HbA1cが中間以上の群が有意にCVDの発症が多かった(ログランクテストによりp<0.001)。

 また、SD-HbA1cと平均HbA1cを取り入れたステップワイズ法による多変量コックス分析では、「平均HbA1cが7.7%以下で、なおかつSD-HbA1cが0.54以下」の場合を1とすると、「HbA1c7.7%以下・SD-HbA1c0.54以上」のハザード比は2.16、「HbA1c7.7%以上・SD-HbA1c0.54以下」ハザード比は2.32、「HbA1c7.7%以上・SD-HbA1c0.54以上」のハザード比は3.56だった。

 以上の結果から、2型糖尿病でもHbA1cの変動が大きい患者は、HbA1cの変動が小さい患者よりも、CVDのリスクが著しく大きいことと、この関係は平均HbA1c値とは独立して確認されることが明らかになった。

 坊内氏は、「HbA1cの変動が大きい患者は、変動が小さい患者に比べて頻繁に高血糖状態にさらされている可能性があり、そのことがCVDの発症に関係しているのではないか」との見解を述べた。

(日経メディカル別冊編集)