英ハル大学のA.J. Dawson氏

 糖尿病発症の危険性が高い患者をスクリーニングする際の基準として、米国糖尿病学会(ADA)は「HbA1c値5.7%以上」、英国保健省DoH)は「HbA1c値6.0%以上」を提案している。しかし、前者でおよそ25人に1人、後者で10人に1人がそれぞれ糖尿病の可能性が高いのに糖尿病と判定されない可能性が示された。9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催されている第46回欧州糖尿病学会EASD2010)で、英ハル大学のA.J. Dawson氏(写真)らが発表した。

 演者らは、患者のHbA1c検査と糖負荷試験(OGTT)を同時に行い、その結果と新しく提案された閾値との関係を検討した。

 2007年1月から2009年11月までの間、Hull and East Yorkshire NHSトラスト(病院や地域の医療サービスの運営母体)の管轄内でOGTTとHbA1cを同時に調べたすべての患者を分析の対象とした。すべてのHbA1c値は、国際標準値(NGSP値)とし、標準化されたDCTT測定法にのっとって測定した。

 妊娠糖尿病の検査をした患者あるいは妊娠中の患者は、分析から除外した。結果はHbA1c値が5.7%未満、5.7〜5.9%、6.0%以上の3グループに階層化した。また、空腹時血糖値が7mmol/L以上あるいは2時間血糖値が11.1mmol/L以上のどちらかの場合は、糖尿病の危険性が高い「異常OGTT」とした。

 試験では、合計835人の患者が分析基準を満たした。そのうち、444人は男性、391人が女性、年齢の中央値は64歳(四分位範囲:56-73歳)であった。

 分析の結果、HbA1c値5.7%未満だった被験者121人のうち33人(全患者の4.0%)は、異常OGTTだった。また、HbA1c値が5.7〜5.9%だった被験者156人では、58人(全患者の6.9%)が異常OGTTとなった。

 これらの結果をもとに演者らは、「糖尿病を発症する危険の高い患者を判定するためにADAの閾値である5.7%以上を用いると、およそ25人に1人は糖尿病の可能性が高いにもかかわらず糖尿病と判断されない。また、DoHの閾値6.0%以上では10人に1人は発症の危険性が低いと判断されてしまうことが分かった」と結論。「こうしたスクリーニングで漏れてしまった患者は、本来なら適切な介入を得られていたはずなのに、次のスクリーニング検査の機会まで(長期間)放置される可能性が高い」などと考察、糖尿病のスクリーニングにおいてHbA1c値だけに依存することの危険性を指摘した。

(日経メディカル別冊編集)