米ハーバード大学公衆衛生大学院のMarcia A Testa氏

 持効型インスリン超速効型インスリンの頻回注射によるインスリン強化療法Basal-Bolus)は、生理的なインスリン分泌に最も近いパターンを再現する最善の方法のひとつだ。しかし、投与の煩雑さと低血糖への懸念からその導入を躊躇、あるいは拒否する患者も少なくない。だが、いったんBasal-Bolusの効果を体験した患者の満足度は混合型インスリン2回打ちを大きく上回り、頻回な投与も負担に感じないことが、患者自身の評価で両レジメンのアウトカムを比較するクロスオーバー試験によって示された。米ハーバード大学公衆衛生大学院Marcia A Testa氏(写真)らが、9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催されている第46回欧州糖尿病学会EASD2010)で報告した。

 試験の対象は、混合型または中間型、持効型+速効型インスリンの2回打ちによる治療中の1型糖尿病患者82人、2型糖尿病患者306人の計388人(平均年齢54歳、男性47%、HbA1c値7.8%)。Testa氏らは、これらの患者を無作為化のうえ、持効型のインスリングラルギン1日1回投与に加えて超速効型のインスリングルリジンを毎食前投与するBasal-Bolusレジメンと、混合型インスリン(75/25または70/30)1日2回投与レジメン(Mix2回投与レジメン)のいずれかによる12週間の治療(第1期)を行った後、レジメンをクロスオーバーしてさらに12週間の治療(第2期)を行った。

 主要評価項目は、患者の評価による満足度(治療自体の満足度、治療の有益性、投与法の受け入れやすさ)とQOLの評価であり、試験直前、ベースライン時、8、12、20週後、試験終了時にアンケート調査を実施し、その結果をスコア化した。また、臨床効果を客観的に評価するために、4〜6週ごとにHbA1c値と空腹時血糖(FPG)を測定するとともに、試験開始直前、第1期および第2期の終了直前に3日間の持続血糖モニタリング(CGM)を実施した。

 その結果、第1期、第2期における12週間のBasal-Bolusレジメンは平均0.39%のHbA1c値の低下と平均27.18mg/dLのFPG低下をもたらした。一方、12週間のMix2回投与レジメンによるHbA1c値の低下は0.05%、FPG低下は平均8.82mg/dLであり、Basal-Bolusレジメンの方が有意に優れていた(ともにp<0.0001)。また、CGMによる1日の平均血糖値、血糖変動幅、>140.4mg/dLの血糖上昇を呈した時間の割合も、Basal-Bolusレジメンの方が少なかった(すべてp<0.0001)。一方、低血糖(<70.2mg/dL)を呈した時間の割合は、両レジメン間には差がなく、同等であった(p=0.10)。

 こうした臨床効果に呼応するかのように、各期のBasal-Bolusレジメンによる治療後には、治療の有益性に関する患者の評価は4つのサブスケール(支持するかどうか、好ましさ、有効性、全般的満足度)すべてで好転し、有益性の総スコアは51.1ポイントから60.5ポイントに上昇した。これに対し、Mix2回投与レジメンではすべてのサブスケールのスコアが低下し、有益性の総スコアは45.4ポイントとなった(p<0.0001 対 Basal-Bolusレジメン)。

 また、QOL全般の評価もBasal-Bolusレジメンの方が有意に良好であった(p=0.018)。一方、注射の煩雑さなど、インスリン治療の負担に関しては両レジメンで同等の評価であった。

 以上のように、Basal-Bolusレジメンに対する患者の満足度は、Mix2回投与レジメンを大きく上回っていた。Testa氏は、「患者の満足度は血糖コントロールの改善に伴う健康状態やQOLの改善と密接に結びついており、これらの改善が大きければ頻回な注射の手間はほとんど問題にならない」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)