「日本人の1型糖尿病患者に対し、持効型インスリン製剤であるインスリン デテミルは、インスリン グラルギンよりも安定した血糖コントロールが可能かもしれない」――。9月30日から10月2日にオーストリア・ウィーンで開催された第45回欧州糖尿病学会(EASD)において、東京慈恵会医科大学の辻野大助氏はこのように述べた。

 辻野氏らは、インスリン強化療法を受けており、この研究への協力が得られた1型糖尿病患者27人(男性10人、女性17人、平均年齢44.0歳)を対象に試験を行った。試験デザインは、非盲検クロスオーバー試験で、まず4日間入院して持続血糖測定を行いながらインスリン デテミルまたはインスリン グラルギンを1日1回または2回注射してもらい、その後1カ月以上間を空けてから、使用薬剤を変えて再度4日間、入院して持続血糖測定を行いながらインスリン デテミルまたはインスリン グラルギンを同様に注射してもらった。それぞれの入院3日目における血糖変動を解析に用いた。インスリン注射回数と注射時刻は、研究中は原則として変更しないこととした。1日1回注射は4人、1日2回注射は23人だった。

 平均血糖値の中央値は、インスリン デテミルを使用した場合に158mg/dL、インスリン グラルギンを使用した場合に160mg/dLと同等だった。低血糖、高血糖の占める時間についても、両者に差はみられなかった。血糖値の変動を表す指標であるMAGE(mean amplitude of glycemic excursions)の中央値は、インスリン デテミルを使用した場合は105.0mg/dLで、インスリン グラルギンを使用した場合の125.3mg/dLに比べ、小さい傾向がみられた(p=0.077)。

 さらに、食事摂取後の血糖変動を調べたところ、朝食後、夕食後の血糖上昇幅にインスリン デテミルとインスリン グラルギンで差はなかったが、昼食後の血糖上昇幅の中央値はインスリン デテミルで59mg/dLだったのに対し、インスリン グラルギン群では77mg/dLと有意に大きな値だった(p=0.005)。

 辻野氏は、「インスリン デテミルは、昼食後には特に血糖変動が小さく、より安定した血糖コントロールが可能と思われた。ご本人の結果をみて頂き、どちらの持効型インスリンを希望するか選んでもらったところ、63%の患者がインスリン デテミルを選んだ」と結んだ。