新たな糖尿病治療薬であるヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アナログ製剤リラグルチド(本邦未承認)が、ヒトの膵β細胞を増殖させ、アポトーシスを抑制することが明らかになった。ヒト膵島細胞を用いた実験結果で、9月30日から10月2日にオーストリア・ウィーンで開催された第45回欧州糖尿病学会(EASD)において、スイス・チューリッヒ大学のS.Rutti氏が発表した。

 単離したヒト膵島細胞を、培養液にリラグルチドを含む群と含まない群に分けて培養し、2日後の膵β細胞量や遊離細胞数を調べた。膵β細胞量についてはインスリン染色、細胞増殖マーカーであるKi-67の染色、細胞増殖に必須な因子のアナログであるBrdUの取り込み量で評価した。その結果、活発に増殖する膵β細胞量は対照群に比べてリラグルチド群で大きく増加しており(p<0.05)、遊離細胞数についても増加していた。また、リラグルチドの濃度を30nMから1000nMへと4段階に変更したところ、濃度依存的に膵β細胞数が増加する傾向がみられた。

 さらに、アポトーシスを促進するインターロイキン-1β(IL-1β)に対するリラグルチドの作用を調べるため、IL-1β2ng/mLを含む培養液にリラグルチド1000nMを加えた群とリラグルチドを加えなかった群、コントロールとして培養液のみとした対照群の3群において、ヒト膵島細胞の培養を4日間行った。その結果、対照群に比べてIL-1βのみで培養した群ではアポトーシスを起こした細胞が有意に増加していたが(p<0.05)、IL-1β+リラグルチド群ではIL-1βのみで培養した群よりも明らかにアポトーシスを起こした細胞が少なく(p<0.05)、対照群と同程度にとどまった。

 一方、細胞増殖を抑制する低密度リポタンパク質(LDL)へのリラグルチドの影響を調べるため、LDL3.1 mMを含む培養液にリラグルチド1000nMを加える群と加えない群、培養液のみの対照群の3群において、4日間、マウスの膵島細胞を培養した。LDL群では対照群に比べて増殖細胞数が減少していたが(p<0.05)、リラグルチドを加えた群では、両群に比べて明らかに増殖中の細胞が増加していた(いずれもp<0.05)。

 Rutti氏は、「リラグルチドは膵β細胞を増殖させるほか、アポトーシスを抑制することが明らかになった。また、増殖を抑えるLDLの作用を打ち消す働きもある可能性が示唆された」とまとめた。