ドイツ・Center for Diabetes and MetabolismのA. Liebl氏

 2型糖尿病では各国のガイドライン医療システムの違いで、患者の転帰に大きな影響を与えていることが示された。欧州で行われた前向き観察研究INSTIGATEの成果で、ドイツ・Center for Diabetes and MetabolismのA. Liebl氏(写真)らが、9月29日から10月2日までオーストリア・ウイーンで開催された第45回欧州糖尿病学会(EASD 2009)で発表した。

 INSTIGATE試験は、通常の治療としてインスリン療法を開始した2型糖尿病患者の臨床状態の推移を追跡調査するもの。ドイツ、ギリシャ、スペインの施設が参加し、治療開始後24カ月までの追跡データをもとに比較検討した。

 調査では、投薬、臨床転帰、生活の質に関連した健康状態、および治療手段などに関するデータをインスリン療法開始時と、その後24カ月間に一定の間隔で収集した。

 試験に登録したのは、全体で726人。内訳は、ドイツ256人、ギリシャ263人、スペイン207人だった。564人(ドイツ155人、ギリシャ237人、スペイン172人)が少なくとも12カ月まで診察を続け、498人(ドイツ119人、ギリシャ227人、スペイン152人)が24カ月まで追跡が可能だった。

 国別の特徴を見ると、ドイツでは患者はより徹底したインスリン療法を施されていた。ベースラインでは、76%(118/155)の患者が食事を基本とした療法を行い、1日に平均3.1回の注射を行っていた。

 一方、ギリシャとスペインでは、ベースライン時に、ギリシャで80%(190/237)、スペインで88%(152/172)がそれぞれ基礎注射のみあるいは混合注射のみだった。1日当たりの平均注射回数は、ギリシャで1.8回、スペインで1.4回だった。

 治療内容では、24カ月にわたりインスリン療法の方法について若干の変更がみられた。ギリシャでは、25人の患者(11%)、スペインでは12人の患者(8%)が治療法を変更し、ドイツでは34人(29%)が変更を行った。

 ベースラインでの1日の平均用量(IU/Kg)は、ギリシャで一番高く0.49(ドイツ0.28、スペイン0.27)だった。24カ月時点では、平均用量はドイツで一番高く0.59となっていた。ギリシャは0.54、スペインは0.34だった。

 平均HbA1cは、3カ国すべてにおいてインスリン療法開始後6カ月で低下し、続く18カ月の追跡期間中比較的安定して低いレベルを維持した。ドイツでのみ、HbA1cレベルが7%以下まで低下した。

 体重の増加については一様ではなかった。インスリン療法開始後の24カ月間の体重変化の平均は、スペインで+0.23Kg、ギリシャで+2.96Kg、ドイツで+3.81Kgだった。

 低血糖症についてもデータを収集したが、インスリン療法開始後最初の6カ月間に少なくとも1回の低血糖症を起こしたと報告した患者の割合は、スペインで20%、ドイツで23%、ギリシャで29%だった。しかし、その割合は時間が経つにつれて減少していた。18カ月から24カ月の間に少なくとも1回低血糖症を起こしたと報告した患者の割合は、スペインで8%、ドイツで10%、ギリシャで23%だった。低血糖症時に第3者の介助または入院が必要となった場合は少なく、特にドイツでは24カ月の間入院を必要としたケースはなく(スペイン3、ギリシャ2)、第3者の介助が必要だったのは4件のみ(スペイン42、ギリシャ65)だった。

 これらの結果から演者らは、インスリン療法開始後6カ月間は終始HbA1cは低下しその後は低レベルで安定していた点を評価した。ただ、国によりインスリン療法を用いた糖尿病管理の方法が異なることが明らかになった点を重視。それは、「国によるガイドライン、医療システムの違いによるもの」と解析し、「患者の転帰に大きな影響を与えている可能性がある」と締めくくった。