新たな糖尿病治療薬であるヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アナログ製剤のリラグルチド(本邦未承認)は、直接細胞の分化や増殖を促進することで膵β細胞を増やしインスリンへの感受性を高める――。正常血糖マウスを用いた実験によって明らかになった。9月30日から10月2日にオーストリア・ウィーンで開催された第45回欧州糖尿病学会(EASD2009)における川崎医科大学からの報告で、加来浩平氏が発表した。

 加来氏らは、10週齢の正常血糖を示すマウス(BKS.Cg-m +/m +/Jcl (m/m) マウス)を対照群とリラグルチド群に分け、リラグルチド群には2週間にわたりリラグルチド200μg/kgを1日2回投与した。食事摂取量や体重、空腹時血糖値、中性脂肪などを計測すると共に、膵島を単離しβ細胞量を調べた。

 その結果、食事摂取量と体重は、対照群に比べてリラグルチド群で有意な低下がみられた(食事摂取量p<0.05,体重p<0.01)。一方、空腹時血糖値などには明らかな変化はなかった。膵β細胞量は、リラグルチド群で有意に増加しており(p<0.05)、細胞の分化・増殖にかかわる複数のマーカーの発現をみたところ、細胞増殖にかかわるPCNAがリラグルチド群で有意に増加していることがわかった(p<0.005)。

 単離した膵島を用いて、含まれるインスリン量とグルコース刺激後のインスリン分泌量を調べたところ、いずれも有意にリラグルチド群で増加していた。膵島での細胞の分化・増殖にかかわる遺伝子発現量をさらに調べると、リラグルチド群では対照群に比べ、分化・増殖に促進的に働くHlxb-9、NeuroDなどの発現量が多く、抑制的に働くHes-1の発現量は少なかった。

 加来氏は、「この研究は正常血糖であるマウスを対象とすることでGLP-1の代謝異常に対する作用を除いた上で、膵β細胞に与える影響を調べたもの。リラグルチドは膵β細胞を増やすことに加え、インスリンへの感受性を高める働きも明らかになった」と結んだ。