デンマーク・Steno Diabetes CenterのD.R. Witte氏

 心血管イベントの予測には、HbA1c測定を、直接の血糖値測定と同様に実施することが望ましいとする研究成果が報告された。デンマーク・Steno Diabetes CenterのD.R. Witte氏(写真)らが、9月29日から10月2日までオーストリア・ウイーンで開催されている第45回欧州糖尿病学会(EASD 2009)で発表した。

 心血管イベントの予測因子としては、HbA1cや空腹時血糖あるいは食後2時間血糖が考えられている。しかし、これらの指標がたとえばアテローム性動脈硬化症の初期段階と関係があるという直接的証拠が必須であるが、実際にそれらを比較した研究はわずかとされる。演者らは、この問題意識から、中年の非糖尿病集団で、血糖状態、HbA1c、空腹時血糖および食後2時間血糖と大動脈の硬さの関係について、潜在的交絡因子も考慮に比較検討した。

 対象は、Whitehall II試験の糖尿病かどうか不明だった登録者1818人(男性1214人)。平均年齢は60.8歳(SD:5.8)、平均体格指数は25.9(SD:3.8)だった。Whitehall II試験の登録者は試験第7相(2003〜2004年)で、75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)およびHbA1cを含む臨床評価を行っており、これが今回の解析でのベースラインとなった。試験第9相(2005〜2006年)では、さらに大動脈の硬さの指標として頸動脈‐大腿部脈波伝播速度(PWV)の測定を行った。

 年齢、性別、平均動脈圧(MAP)で調整した直線回帰モデルによる解析を行い、および心血管リスク因子でさらに調整した場合の結果を求めた。

 その結果、平均PWVは8.3m/s(SD:2.0)だった。PWVは、空腹時血糖異常(IFG)のみを有する群と正常血糖の対照群との間で差はなかった(β:-0.02m/s; 95%信頼区間:−0.5‐0.5)。耐糖能異常(IGT)のみを有する群(β:0.9、95%信頼区間:0.3‐1.5)、IFGとIGTの両方を有する群(β:0.5、95%信頼区間:0.2‐0.7)、および新たに糖尿病と判明した群(β:0.7、95%信頼区間:0.3‐1.2)ではPWVが高く、動脈がより硬いことを示していた。

 さらに年齢、性別およびMAPで補正した五分位を求め、最下位と比較したPMVの差を、HbA1c、空腹時および食後2時間血糖ごとに求めたところ、最上位はHbA1cで0.5m/s、空腹時血糖で0.4m/s、食後2時間血糖で0.7m/sとなった。その上で、心血管リスク因子(喫煙、HDLコレステロール、中性脂肪、スタチン療法、降圧療法)で補正したところ、最下位と比較したPWVの差は、HbA1cでは最大23%、空腹時血糖では27%、食後2時間血糖で33%減衰した。

 ただ、HbA1cの上位2つの五分位と、空腹時および食後2時間血糖の最上位の五分位の差は、統計的に有意のままだった。この範囲では、年齢、性別、MAPで補正後、PWVは、HbA1cで標準偏差増分当たり最大0.19m/s (95%信頼区間:0.11‐0.28)、空腹時血糖で0.19m/s (同0.11‐0.27)、食後2時間血糖で0.25m/s (同0.17‐0.33)、それぞれ増加した。

 演者らは、今回得られた知見では大動脈の硬さ(早期の全身性アテローム動脈硬化症のマーカー)に関して、HbA1c、空腹時血糖および食後2時間血糖は同程度の影響を示していた、と結論した。その上で「心血管イベントの予測には、HbA1cの測定を、直接の血糖値測定と同様に実施することが望ましい」との見解を示した。