新たな糖尿病治療薬であるヒトグルカゴン様ペプチド-1GLP-1)アナログ製剤リラグルチド(本邦未承認)を肥満者に投与すると、明らかな体重減少が得られ、2型糖尿病発症の強力な予測因子とされる耐糖能異常状態、すなわち糖尿病前症が減少することが明らかになった。9月30日から10月2日にオーストリア・ウィーンで開催されている第45回欧州糖尿病学会(EASD)で、英国・ロンドン大学のN.Finer氏が報告した。糖尿病前症の定義は、空腹時血糖値5.6〜6.9mmol/L(100.8〜124.2mg/dL)または食後2時間血糖値7.8〜11.0mmol/L(140.4〜198mg/dL)とした。

 対象は、BMIが30〜40kg/m2、空腹時血糖値が7mmol/L(126mg/dL)未満で体重の安定した564人(18〜65歳)。対象者は、リラグルチドを1.2mg、1.8mg、2.4mg、3.0mgのいずれか1日1回投与する4群と、プラセボを1日1回投与する群、抗肥満薬オルリスタット(本邦未承認)を1日3回120mg投与する群の計6群に無作為に割り付けられ、20週間投与を継続した。各群の人数は、リラグルチド1.2mg群95人、1.8mg群90人、2.4mg群93人、3.0mg群93人、プラセボ群98人、オルリスタット群95人だった。対象者は全員、食事摂取量を減らし、運動するよう指導を受けた。

 投与開始から20週後の体重変化量は、リラグルチド投与群では、1.2mg群で-6.8kg、1.8mg群で-7.8kg、2.4mg群で-8.4kg、3.0mg群で-9.1kgであった。一方、プラセボ群では-4.3kg、オルリスタット群では-5.7kgの体重減少にとどまった。

 試験前後での各群の糖尿病前症者の割合は、リラグルチド1.2mg群では31%から18%へ、1.8mg群では36%から1.4%へ、2.4mg群では36%から5.5%へ、3.0mg群で31%から4%へと、いずれも明らかに減少した(p<0.0001)。これに対し、プラセボ群では36%から35%とほぼ差はなく、オルリスタット群では29%から31%と、わずかに上昇していた。一方、正常から糖尿病前症へと進行した肥満者の割合は、プラセボ群23%、オルリスタット群19%だったのに対し、リラグルチド1.2mg群で6%、1.8mg群で0%、2.4mg群で2%、3.0mg群で4%と少ない傾向にあった。

 GLP-1受容体作動薬の有害事象として知られる悪心によって試験から脱落した対象者は、リラグルチド投与群で8人であったが、脱落は試験開始から8週以内に集中しており、その症状は徐々に軽快していくものと思われた。結果的に、試験から脱落した割合は、リラグルチド1.2mg群11%、1.8mg群18%、2.4mg群22%、3.0mg群12%、プラセボ群19%、オルリスタット群17%と、大きな差はなかった。

 Finer氏は、「肥満者へのリラグルチド投与によって、耐糖能の改善が認められた。これは、空腹時高血糖の改善と体重減少によるものと推測される。耐糖能異常がみられる肥満症例にリラグルチドを投与することで、2型糖尿病の発症を遅らせることができるかもしれない」と期待を込めた。