近畿大学医学部腫瘍内科の福岡正博氏

 非小細胞肺癌NSCLC)のファーストライン治療で、ゲフィチニブとカルボプラチン/パクリタキセル(C/P)併用の比較検討から、EGFR変異は無増悪生存期間(PFS)と奏効率の特異的なベネフィットを予測する強力なバイオマーカーであったことが分かった。IPASS試験の対象のバイオマーカーを解析した結果から明らかになった。成果は、5月29日から6月2日に開催された第45回米国臨床腫瘍学会ASCO2009)のOral Abstract Sessionで、近畿大学医学部腫瘍内科の福岡正博氏(写真)が発表した。

 IPASS(IRESSA Pan-Asia)試験は、NSCLCのファーストライン治療でゲフィチニブを投与した609人とカルボプラチンとパクリタキセル(C/P)を併用した608人において、主要評価項目としてPFSを比較したアジアで実施された第III相試験である。PFSは、最初はC/P併用群で良好となり、その後ゲフィチニブ単独投与群で上回る結果となった。

 ゲフィチニブのこのような効果には、バイオマーカーが関連していると考えられる。福岡氏らはまず、本試験の対象から437人について上皮成長因子受容体(EGFR)変異とPFSの関連性を解析した。

 対象中、65歳未満が74.6%、喫煙歴がない人が92.7%であった。ゲフィチニブ投与群では、変異がある患者132人のPFSは9.5カ月であったが、変異がない患者91人のPFSは1.5カ月で、C/P併用群の5.5カ月よりも不良であった。変異の状態が不明の患者のPFSは6.6カ月で、試験対象全体の結果と同様であった。

 次に演者らは、EGFR遺伝子コピー数が「高い」群を、high polysomy(細胞の40%以上に4コピー以上)などと定義し、EGFR遺伝子コピー数とPFSの関連性を解析した。蛍光in situハイブリダーゼイション(FISH)法によるEGFR遺伝子コピー数は、406人で評価可能であった。対象中、65歳未満は74.6%、喫煙歴がない人は92.4%であった。

 その結果、ゲフィチニブ単独投与群では、EGFR遺伝子コピー数が高い124人のC/P併用群に対するPFSのハザード比(HR)は0.66、同コピー数が低い81人のC/P併用群に対するPFSのHRは1.24であった。EGFR遺伝子コピー数がPFSの傾向に関連するのは、EGFR遺伝子コピー数の高さとEGFR変異陽性であることが重複するためとみられた。

 ゲフィチニブ単独投与群のC/P併用群に対するPFSのハザード比は、EGFR変異がありEGFR遺伝子コピー数が高い96人では0.48、EGFR変異がなく同コピー数が低い26人では3.85となった。

 EGFR蛋白発現(protein expression; PE)については、365人について免疫染色で評価しPFSとの関連性を解析した。対象中、65歳未満は71.8%、喫煙歴がない人は91.5%であった。ゲフィチニブ単独投与群のC/P併用群に対するPFSのハザード比は、EGFR蛋白発現陽性の132人では0.73、EGFR蛋白発現陰性の53人では0.97で、大きな差は認められなかった。

 本解析ではPFSと奏効率の傾向は一致していた。これらの結果から、「集団を分子学的に定義することで、ファーストラインのゲフィチニブから最も大きなベネフィットが得られることになる」と福岡氏は結論している。