スイスCentre HospitalierUniversitaire VaudosisのK. Zaman氏

 閉経後の乳癌患者に対する治療法のうち、レトロゾール投与のみ、タモキシフェン投与のみ、レトロゾール投与後にタモキシフェン投与、タモキシフェン投与後にレトロゾール投与の4種類について、それぞれの骨密度BMD)への影響を調べたところ、タモキシフェン単独投与を基準とした場合、それ以外の投与方法でBMDへの影響に違いはみられなかった。中でも、レトロゾール単独投与よりもシークエンシャル投与が良好な骨保護を示す結果にはならないことが分かった。スイスCentre HospitalierUniversitaire VaudosisのK. Zaman氏(写真)が、5月29日から6月2日に米国オーランドで開催されている第45回米国臨床腫瘍学会ASCO2009)のGeneral Poster Sessionで発表した。

 骨粗鬆症および骨折は、乳癌の術後内分泌療法に使用するアロマターゼ阻害薬の長期合併症である。治療誘発性の骨粗鬆症のリスクがある患者を早期に発見することにより、予防治療および最適な内分泌療法の選択が可能になる。

 Zaman氏らは、Swiss Group for Clinical Cancer Research(SAKK21/07)として、タモキシフェン単独投与、レトロゾール単独投与、両剤のシークエンシャル投与を比較するBIG 1-98試験で治療したスイス人乳癌患者において、BMDの変化を表す統計学的モデルを開発した。

 本試験の主要評価項目は、各治療群のBMD変化を表す統計学的モデルを構築することであり、副次的評価項目は、骨折リスクの代用マーカーであるT-scoreに対する治療の影響を評価すること、およびZ-scoreでBMD低下に関係する年齢の付加因子として、内分泌治療の影響の重要性を評価することであった。

 治療対象は、(A)タモキシフェンを5年間投与、(B)レトロゾールを5年間投与、(C)タモキシフェンを2年間投与後、レトロゾールを3年間投与、(D)レトロゾールを2年間投与後、タモキシフェンを3年間投与、の計4群とした。

 患者のBMD測定状況については、二重エネルギーX線吸収法(DXA)のデータをレトロスペクティブに収集した。DXAを行っていない患者は、選択のバイアスを検出するための対照とした。 546人中、DXAを受けたのは247人。1人当たり1〜5回のDXAを受けており、計576回のDXAのデータが収集された。治療群別では(A)群67人、(B)群63人、(C)群5人、(D)群62人となった。

 測定モデルには、DXAを施行した間の異なる時間について解析が可能になるfirst-order autoregressive covariance structureを用い、試験の無作為化の時点からのBMDのモデルを作成した。

 単変量解析によるBMDの予測因子と予測値を求めたところ、子宮摘出術(予測値:0.048、p=0.0019)、ホルモン補充療法(HRT)(以下同:0.033、p=0.0131)、過去の術後または術前化学療法の治療歴(0.024、p=0.0906)、身長(0.005、p<0.001)、体重(0.002、p<0.0001)などであった。

 一方、多変量解析では、BMDの予測因子と予測値は、子宮摘出術(予測値:0.043、p=0.0047)、過去の術前または術後化学療法の治療歴(以下同:0.027、p=0.0448)、HRT(0.027、p=0.0488)、体重(0.003、p<0.0001)、身長(0.003、p=0.0088)、内分泌療法開始時からの時間(年)(−0.009/、p=0.0205、治療群の(A)に対する(B)(C)(D)の内分泌療法開始時からの時間はそれぞれ−0.061、p=0.0008、−0.088、p<0.0010、−0.058、p=0.0010)であった。

 本統計学的モデルにより、レトロゾールまたはタモキシフェンで治療した患者のBMDの変化が表され、すべての治療レジメンがさまざまな程度でBMDに影響することが分かった。Zaman氏らは、予測に反して、タモキシフェンに引き続きレトロゾールを投与するシークエンシャル投与がレトロゾール単剤投与に比べて、より骨の保護につながるとの結果にはならなかったと述べ、さらなる詳細な解析を続行している。