大阪医療センターの増田慎三氏

 HER-2陽性の乳癌患者に対するネオアジュバント療法としての基本全身療法(primary systemic therapy; PST)で、5FUとエピルビシンとシクロホスファミド(CEF)に、パクリタキセルとトラスツズマブ(PH)、またはドセタキセルとトラスツズマブ(DH)を追加投与すると、どちらのレジメンでも同等の効果が得られ、顕著な毒性を伴うことなく高い病理学的奏効(pCR)を得られる可能性が示された。第II相試験の結果から明らかになったもので、成果は5月29日から6月2日に米国オーランドで開催された第45回米国臨床腫瘍学会ASCO2009)のGeneral Poster Sesssionで、独立行政法人国立病院機構大阪医療センター増田慎三氏(写真)が発表した。

 基本全身療法でpCRを得ることは、手術可能な乳癌患者の無病生存率の改善と直接関係する。

 化学療法とトラスツズマブの併用による高いpCR率のデータが複数の臨床試験で報告されている。増田氏らは、多施設、前向き、無作為化第II相試験において、ネオアジュバント療法の設定でパクリタキセルの週1回投与とドセタキセルの3週毎投与の比較を行い、HER-2陽性患者に対する標準化学療法にトラスツヅマブを加えた場合の有効性を評価し、さらなるpCRの向上を目指してより有効な薬剤を決定した。

 本試験では、CEF(5-FU 500mg、エピルビシン100mg/m2、シクロホスファミド500mg)を3週ごとに4サイクル施行した後、トラスツヅマブ(8→6mg/kg)の3週ごと投与4サイクルとパクリタキセル80mg/m2の週1回投与(PH)12サイクルを行うCEF-PH群と、CEFにトラスツヅマブ同量の3週ごと投与4サイクルとドセタキセル75mg/m2の3週ごと投与(HD)4サイクルを行うCEF-DH群を設定した。

 主要評価項目はpCRの評価とし、腋窩および乳房に浸潤性の癌が残存しないことと定義した。副次的評価項目は無病生存率、臨床的な完全奏効率(CR)、乳房温存率などとした。

 HER2陽性でステージIIまたはIIIAで、心機能が維持されている乳癌患者をCEF-PH群に50人(年齢中央値51歳、範囲34〜65歳)、CEF-DH群に51人(同53歳、同28〜63歳)を無作為に割り付けた。安全性および毒性の解析はこの101人で行った。患者背景として、CEF-PH群とCEF-DH群のステージIIA、IIB、IIIAの内訳はそれぞれ21、19、10人と17、25、9人でステージの分布のバランスは良好であった。有効性の解析は、Per Protocol Set(PPS)の対象となった82人で行った。

 その結果、pCR率は、計46.3%となった。CEF-PH群は52.4%、CEF-DH群は40.0%で両群間に有意差はなかった(p=0.2780)。ホルモンレセプター陽性でpCRを示した9人(27.3%)中7人と、陰性でpCRを示した29人(59.2%)中13人は、それぞれ非浸潤性乳管癌(DCIS)の要素を有していた。

 臨床的なCRはCEF-PH群71.4%、CEF-DH群70.0%、部分奏効(PR)はそれぞれ21.4%と20.0%であった。乳房温存術が行われた割合は計73.2%で、CEF-PH群81.0%、CEF-DH群65.0%となった。

 治療の忍容性は良好であった。重篤な有害事象は12件報告され、有熱性の好中球減少が4人に認められた。CEF-PH群でPHの投与サイクルで左室駆出率(LVEF)が39%に低下する心不全が1件に出現したが、回復した。

 今回の結果から、HER-2陽性患者ではCEFにPHまたはDHを追加することで同等の効果が得られ、顕著な毒性を伴うことなく高いpCRを得られる可能性が示された。増田氏らは、今後、エストロゲンレセプター陽性かつHER-2陽性の乳癌患者について検討し、生存期間を改善するための研究を行うとともに、PST施行後に高いpCR率が期待できる患者では手術を行わない方向に進めることも視野に入れたいとしている。