BIG1-98 Collaborative Groupを代表して発表したKarin E. Ribi氏

 ホルモン療法によって認知機能が影響を受けるとする報告はある中、アロマターゼ阻害剤レトロゾールはタモキシフェンに比べて乳癌患者の認知機能を維持していることが明らかになった。術後治療として、タモキシフェンとレトロゾールの効果を比較した大規模フェーズ3臨床試験「BIG1-98」を解析して明らかになった。5月29日から6月2日にオーランドで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、IBCSG および BIG1-98 Collaborative Groupを代表してKarin E. Ribi氏が発表した。

 BIG1-98試験では、タモキシフェン5年間投与群(A群)とレトロゾール5年間投与群(B群)、タモキシフェン2年間投与後、レトロゾールを3年間投与する群(C群)、さらにレトロゾール2年間投与後、タモキシフェンを3年間投与する群(D群)の4群が比較された。

 今回の解析は、5年間の治療後の認知機能の程度を、精神運動機能の速度や視覚的注意、作業記憶(ワーキングメモリ)、言語性記憶や学習に関する7つのタスクを用いて評価し、各タスクにおけるZスコアを求めた。

 レトロゾールの投与期間が長いB+C群(65人)と、タモキシフェンのA+D群(55人)において検討した結果、7つのタスクのZスコアを統合したスコア値が両群とも同年齢の健常者と比べると低いことが示され、特にタモキシフェン群では低かった。またZスコア平均値からの差では、レトロゾール群がタモキシフェン群よりも認知機能が高いことが示された(Zスコア平均値からの差0.28、95%信頼区間0.02-0.54、p=0.04)。

 続いて、Zスコアが健常者の値よりも標準偏差で1.96下回っている場合を「障害あり(impaired)」と定義したところ、7つのタスクから何らかの障害があると判断された患者が、タモキシフェン群では54.4%であるのに対し、レトロゾール群では36.9%に留まっていた(p=0.05)。

 今回の解析では、治療開始前の認知機能が測定されていないという欠点はあるものの、術後治療としてレトロゾールを投与した乳癌患者は、タモキシフェン治療を受けた患者に比べて、認知機能が維持されていたといえる。

 認知機能に関しては、TEAM(Tamoxifen, Exemestane, Adjuvant, Multicenter)試験において、タモキシフェン投与で認知機能の低下が見られたが、アロマターゼ阻害剤(エキセメスタン)では認知機能に影響は認められないと報告されている。Ribi氏は、今回の解析はそれを支持する結果になっていると考察した。