米Mayo Clinicにおいて、年々減っていた早期乳癌の患者に対する乳房全摘術の実施割合が2003年を境に増え始めた。2003年には31%だったのに対し2006年には43%と、この3年で12%増えていることが分かった。また術前にMRI検査を受けている乳癌患者は、受けていない患者よりも乳房全摘術が実施される傾向が見られた。この結果は5月30日から6月3日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、Mayo clinicのsenior clinical fellowであるRajini Katipamula氏が発表した。

 ステージ0-2の早期乳癌は、乳房部分切除術に術後放射線治療を併用すれば、乳房全摘術と同等の治療成績が得られることを1990年にNIH(National Institutes of Health)が発表した。以来、世界各国で徐々に術式は乳房部分切除術がスタンダードとなり、年々乳房全摘術の実施率は減少してきた。

 一方、最近10年間の乳癌手術に関連する際立った進歩として、術前のMRI検査や遺伝子検査、手術時の乳房再建術の進歩などがある。中でも術前MRI検査は、術式確認のために実施すると、何割かの患者は病変の範囲が拡大することが分かっている。本調査は、乳房全摘術の実施率と、術前MRI検査の実施率との関連に着目して、レトロスペクティブコホート研究を行った。

 対象は、1997年から2006年にMayo Clinicで乳癌の根治手術を受けたステージ0-2の乳癌患者5583人(女性:5405人)。平均年齢は61歳(±16歳)。TNMステージは0が17%(954人)、1が49%(2716人)、2が34%(1913人)だった。ステージ1-2の患者では、浸潤性小葉癌が11%、浸潤性乳管癌が81%、その他の浸潤癌が8%だった。乳腺密度(1、2、3、4)は、それぞれ9%、42%、38%、11%だった。

 術式などの情報はsurgical indexや癌登録から調べた。MRIの実施率については、2003年から開始した乳房MRIデータベースから検索した。術前MRIの定義は、術前30日以内に実施したものとした。

 その結果、同院内における乳房全摘術の実施率は、1997年の45%から03年までは徐々に減っていたのに対し、2003年の31%を境に上がり始め、06年の実施率は43%。術前のMRI実施率は、2003年に10%だったのが2006年には23%に増加していた。

 術前にMRIを受けた患者(03-06年)では53%、受けていない患者では36%が乳房全摘術を受けており、術前にMRIを行った方が乳房全摘術を実施する傾向にあった(p<0.0001)。ただし、術前にMRIを受けていない群でも、受けている群と同様に乳房全摘術が増えている傾向は見られた(03年29%→06年41%、p<0.0001)。

 年齢、TNMステージ、対側乳癌の有無などでリスク調整を行い、多変数のロジスティクス回帰分析を行うと、術前MRIの実施(オッズ比1.6、95%信頼区間1.2-2.0、p<0.0003)と手術を行った年(06年と03年の比較でオッズ比1.7、95%信頼区間1.3-2.2、p<0.0001)は、互いに独立して乳房全摘術の予測変数となっていた。

 Katipamula氏は、「かなりの数の早期乳癌患者が乳房全摘術を受けている実態が明らかになった。術前におけるMRI検査の増加は、その一部分として相関しているのではないか」と話す。

 ただし同氏は、この数年で全摘術が12%も増えている要因は術前MRIの増加だけでは説明できず、本研究だけで両者の因果関係の確立は難しいとの見解も示した。

 乳房全摘術の実施を促進させるそのほかの要因として、患者や外科医の好み、乳房再建術という選択肢が出てきたこと、そして再発リスクや定期的な乳癌生検の必要性を憂慮した上での選択などを挙げた。

 Katipamula氏は、「引き続き、患者や外科医が術式を決定する際にどんな要因がより影響を与えるのか、またこうした術式選択の変化が長期的にみて乳癌患者のQOLや全体的なアウトカムを向上させるのかどうか、さらなる試験が必要だ」とまとめた。