葉酸受容体αに対するヒト化モノクローナル抗体製剤「MORAb-003」(ファレツズマブ)を、プラチナ製剤感受性を示す卵巣癌患者に単剤またはプラチナ製剤/タキサン系薬剤と併用するフェーズ2試験で好結果が得られた。成果は、米Johns Hopkins大学のDeborah K.Armstrong氏によって、ASCOで2008年6月1日に報告された。

 卵巣癌の90%以上に葉酸受容体αの発現が見られる。発現レベルは体内における病気の悪性度と相関している。in vitroでは、この受容体の発現が癌細胞の増殖能を高めることが示されている。正常組織には葉酸受容体αの発現はほとんど見られない。今回臨床試験の対象となった上皮性卵巣癌の患者においても、その多くに葉酸受容体αの過剰発現が見られる。

 「MORAb-003」は、Srcファミリーの一員であるチロシンキナーゼLynによるリン酸化を阻止し、癌細胞を死に至らしめる。モデル動物では、癌細胞の増殖を抑制することが示されている。

 また、先に行われたフェーズ1試験では、「MORAb-003」がプラチナ製剤抵抗性上皮性卵巣癌患者に単剤で投与された。得られた結果は、高用量でも忍容性が高いこと、抗体は腫瘍細胞に結合していることを示し、抗癌作用も示唆された。

 フェーズ2試験においては、「MORAb-003」が単剤、または、プラチナ製剤/タキサン系薬剤(P/T)と併用された。対象は、プラチナ製剤感受性上皮性卵巣癌で、初回寛解が6-18カ月続いた後に再発しCA-125の上昇がある患者。即座に化学療法が必要かどうかなど、再発の状態により患者を分類し、下記の治療に割り付けた。

 A群:再発部位のサイズが小さく無症候の患者には、週1回「MORAb-003」100mg/m2を単剤で投与し、病気が進行するまで治療を継続した。このグループのエンドポイントは全奏効率に設定。

 B群:再発部位のサイズが大きい、または、全身性の再発があった患者と、A群で進行が見られた患者には、「MORAb-003」を週1回、P(カルボプラチン)/T(パクリタキセルまたはドセタキセル)を21日置きに6回投与(6サイクル)する治療を実施。このグループのエンドポイントも全奏効率。

 C群:B群のうち完全奏効、部分奏効または病態安定と判定された患者に、「MORAb-003」を単剤で使用する維持療法を実施。このグループのエンドポイントは、個々の患者における初回寛解期間と再寛解期間の比較に設定された。

 試験全体のエンドポイントは、CA-125値の正常化、RECIST基準に基づき完全奏効、部分奏効、病態安定、進行と判断された患者の割合、初回寛解期間と比べた再寛解の期間、安全性となっている。

 58人の患者(年齢の中央値は64.3歳)を登録、54人をA群(28人)とB群(26人)に割り付けた。第一選択薬として全員がカルボプラチンとタキサンの投与を受けており、初回寛解期間の中央値は10.7カ月だった。

 A群の28人のうち25人が9週間以上治療を受けた。CA-125値が75%以上減少した患者が1人、25%以上減少が1人、8人が不変で、CA-125値の上昇を見た患者は15人だった。

 B群は、当初割り付けられた26人とA群からこちらに移行した18人の計44人。評価が可能だった患者は41人だった。41人中3人がCA-125値の上昇を経験。1人は今も治療中で結果が得られていない。

 B群でCA-125値が正常化した患者は37人(90.2%)。現在も追跡している34人のなかで、再寛解期間が初回寛解期を上回るかどうかの評価が終わったのは12人。そのうち、再寛解期間が初回と同じかそれより長かった、エンドポイント達成者は6人(1人は1回目と2回目が全く同じだった)。現在追跡中の患者の中にこのエンドポイントを達成できる可能性のある人が15人いる。

 CA-125が正常化した患者の割合は、1サイクル終了後は20%超、2サイクル終了後は50%超、6サイクル終了時に90%と増加した。CA-125値は、治療開始後、非常に迅速に低下した。

 CA-125値の低下と並行してRECISTスコアが改善。30%の患者が検査を終えた時点の評価では、全体の7.4%の患者が完全奏効、62.9%が部分奏効、25.9%が安定と判断された。進行は3.7%のみ。全奏効率は70.3%、利益があった患者は96.3%に上った。

 これまでに行われた研究では、化学療法単独で再寛解を達成できる患者は35〜55%と報告されていた。

 「MORAb-003」単剤群、併用群の両方において、薬剤関連有害事象の報告はほとんど無かった。

 「MORAb-003」とP/T併用により、患者の90%でCA-125値が正常化し、全奏効率上昇と寛解期間延長が見られた。一方、単剤は一定期間病態安定をもたらす可能性があるが、最適なレジメンは明らかではない。

 これらのデータに基づいて、プラチナ製剤感受性または抵抗性の上皮性卵巣癌患者に「MORAb-003」を投与する次の無作為化試験が計画されている。

 この製品を開発しているのは、米Morphotek社。同社は2007年3月、エーザイに買収されている。