mTOR阻害剤テムシロリムスが、マントル細胞リンパ腫で無増悪生存期間を延長させ、奏効率も有意に改善することがフェーズ3臨床試験で明らかになった。この結果は5月30日から6月3日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、ドイツJohannes Gutenberg-UniversityのG.Hess氏らが報告した。

 mTOR(mammalian target of rapamycin)は細胞の分裂や成長を調節するセリン・スレオニンキナーゼ。テムシロリムス(海外での商品名「トリセル」)は、腎細胞癌の治療薬として欧米では認可されており、わが国でも腎細胞癌で申請中だ。

 フェーズ3臨床試験は、再発あるいは治療抵抗性のマントル細胞リンパ腫患者を対象に、テムシロリムスを週1回175mg、3週間投与し、その後週1回75mgを投与する群(175mg/75mg群)と、同じく週1回175mg、3週間投与した後に、週1回25mgを投与する群(175mg/25mg群)、担当医師の選択した薬剤を投与する群(医師選択群)の3群に無作為に割り付けて行われた。

 2007年7月19日までに18カ国113施設の162人が登録された。年齢中央値は67歳、男性が81%を占めた。患者の半数は、リツキシマブやアントラサイクリン系薬剤、幹細胞移植を含む前治療を4回以上受けていた。また、担当医師が選択した薬剤は、ゲムシタビン(22人)、フルダラビン(14人)、クロラムブシル(3人)、クラドリビン(3人)、エトポシド(3人)、シクロホスファミド(2人)などだった。

 実際の投与量は、1から3週目で、テムシロリムス175mg/75mg群が平均で週あたり130mg(dose intensityは0.74)、175mg/25mg群が122mg(同0.70)、4週目から治療終了までは、175mg/75mg群が52mg(同0.69)、175mg/25mg群が21mg(同0.86)だった。

 主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は中央値で、医師選択群が1.9カ月(97.5%信頼区間1.6-2.5)だったのに対し、175mg/75mg群が4.8カ月(同3.1-8.1)、医師選択群に対するハザード比は0.44(同0.25-0.78、p=0.0009)と、有意なPFSの改善が見られた。一方、175mg/25mg群のPFS は3.4カ月(同1.9-5.5)、ハザード比は0.65(同0.39-1.10、p=0.0618)だった。

 生存期間中央値は、2008年2月1日までの時点で、医師選択群が9.7カ月(95%信頼区間5.8-15.1)であるのに対し、175mg/75mg群が13.6カ月(同9.9-22.3)、ハザード比が0.80(同0.50-1.28、p=0.3425)、175mg/25mg群では10.0カ月(同7.2-14.6)、ハザード比は0.97(同0.61-1.56、p=0.9055)と、いずれも有意ではなかった。

 奏効率は、医師選択群が2%(95%信頼区間0-5)に対し、175mg/75mg群が22%(同11-33、p=0.0019)、175mg/25mg群が6%(同0-12、p=0.6179)と、175mg/75mg群では奏効率の改善が見られた。

 グレード3/4の検査値異常は、血小板減少が175mg/75mg群で63%、175mg/25mg群で52%、医師選択群で40%に見られ、好中球減少はそれぞれ24%、30%、45%だった。臨床的に認められた主なグレード3/4の有害事象は、無力症が175mg/75mg群で13%、175mg/25mg群で19%、医師選択群では8%、感染症がそれぞれ9%、4%、4%、下痢が7%、11%、0%だった。この結果から、テムシロリムスは医師が選択した薬剤に比べて、毒性は強いが軽度であり、管理可能であるとしている。