愛知県がんセンター中央病院呼吸器科部長の樋田豊明氏

 非小細胞肺癌(NSCLC)患者において白金製剤系抗癌剤投与の後、ゲフィチニブを継続して投与することで腺癌の全生存率が改善することが明らかとなった。5月30日からシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)のオーラルセッションで愛知県がんセンター中央病院呼吸器科部長の樋田豊明氏が発表した。

 分子標的薬ゲフィチニブは、上皮成長因子受容体EGFR)を阻害するタイプの抗癌剤。化学療法単独の場合と比較して、ゲフィチニブと化学療法との併用療法において生存率の向上は確認されていない。

 そこで、発表された無作為化フェーズ3試験では、進行性の非小細胞肺癌を対象に、抗癌剤と併用するのではなく、抗癌剤治療後、維持療法としてゲフィチニブを継続投与し、その結果を評価した。

 対象は、組織学的あるいは細胞学的に確認された3B/4期の非小細胞癌患者(NSCLC)で、全身状態が比較的良く(ECOG PS 0-1)前治療を行っていない20歳から74歳の患者とした。標準的な白金系抗癌剤を含む化学療法のみを3サイクル以上(最大6サイクルまで)行った群(A群、298人)と化学療法3サイクル後に継続して1日250mgのゲフィチニブを疾患が増悪するまで投与した群(B群、300人)とに無作為に割り付けられた。

 化学療法のレジメンは、カルボプラチン(AUC6を1日目に投与)+パクリタキセル(200mg/m2を1日目に投与)を3週ごとに行うもの(A群193人、B群195人)、シスプラチン(80mg/m2を1日目に投与)+イリノテカン(60mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与)を4週ごとに行うもの(A群8人、B群10人)、シスプラチン(80mg/m2を1日目に投与)+ビノレルビン(25mg/m2を1日目、8日目に投与)を3週ごとに行うもの(A群44人、B群45人)、シスプラチン(80mg/m2を1日目に投与)+ゲムシタビン(1000mg/m2を1日目と8日目に投与)を3週ごとに行うもの(A群45人、B群42人)、シスプラチン(80mg/m2を1日目に投与)+ドセタキセル(60mg/m2を1日目に投与)を3週ごとに行うもの(A群8人、B群8人)だった。

 主要評価項目は全生存率(OS)、副次的な評価項目は全体的な無増悪生存期間、奏効率(CR+PR)、安全性、生活の質(QOL)とされた。

 A群のうち、喫煙者は202人、非喫煙者は96人で、腺癌は232人(77.9%)で非腺癌は66人(22.1%)、3B期は54人(18.1%)で4期は244人(81.9%)だった。B群のうち、喫煙者は210人、非喫煙者は90人、腺癌は237人(79.0%)で非腺癌は63人(21.0%)、3B期は55人(18.3%)で4期は245人(81.7%)だった。

 全体のOSの中央値は、B群が13.68カ月で、A群が12.89カ月(ハザード比0.86、95%信頼区間0.72-1.03、p=0.10)で統計学的には有意でなかったが、B群が優れる傾向があった。腺癌に限定するとOSの中央値は、B群15.42カ月でA群14.33カ月(ハザード比0.79、95%信頼区間0.65-0.98、p=0.03)で有意にB群が優れていた。一方、非腺癌に限定するとOSの中央値はB群7.69カ月でA群9.17カ月(p=0.24)となり、腺癌に対するゲフィチニブ維持療法の有効性が示された。

 PFSの中央値は、B群4.60カ月でA群4.27カ月(HR=0.68、95%信頼区間0.57-0.80、p<0.001)でB群の方が統計学的に有意に優れていた。奏効率はB群が34.2%、A群が29.3%(p=0.19)で統計学的な有意差はなかった。

 また、同試験で行われたサブ解析の中で、喫煙者腺癌におけるOSの中央値はB群13.64カ月でA群10.03カ月(p=0.003)だったことから、樋田氏は、「喫煙者の腺癌においても維持療法で改善がみられたことは今後、期待のできる治療戦略となるだろう」と語っている。