兵庫県立がんセンター呼吸器科の里内美弥子氏

 化学療法歴のない進行性の非小細胞肺癌NSCLC)において、ゲムシタビン(GEM)経口5-FU薬であるS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)との併用による治療の有効性安全性が確認された。成果は、米シカゴで5月30日から6月3日まで開催された米国臨床腫瘍学会ASCO)のポスターセッションで、兵庫県立がんセンター呼吸器科の里内美弥子氏が発表した。

 S-1は比較的穏やかな副作用抗腫瘍効果を持ち、日本ではNSCLCの治療に使われているが、GEMと5-FUの組み合わせは、相乗的な細胞障害の影響を持つことが知られている。

 本研究は、化学療法の経験がないNSCLC患者におけるGEM+S-1療法の有効性と安全性を確認することと、S-1と併用するGEMの投与スケジュールを決定することを目的として行われた。

 対象は、化学療法による治療経験のないステージ3B-4の非小細胞肺癌患者79人(ステージPSは0または1)。ステージ3Bが18人、4が53人、再発が8人だった。

 患者を無作為に2群に分け、1サイクル21日として、S-1を1日目から14日目まで毎日投与し、GEMは1日目と8日目に投与するスケジュール(A群)と、S-1の投与日程は同様で、GEMを8日目と15日目に投与するスケジュール(B群)とした。

 A群は41人(腺癌扁平上皮癌:37/4)、B群は38人(27/10)。年齢はA群で75歳以上が3人、75歳未満が38人、B群では6人、32人だった。全身状態(ECOGのPS:0/1)は、A群で13人/28人、 B群は8人/30人。性別、年齢、ステージ、PSなどについては、両群で差はなかった。

 プライマリーエンドポイント客観的奏効率ORR)、セカンダリーエンドポイント治療完了率(treatment completion rate ≧3コース)、安全性、治療効果持続期間(TTP)、全生存期間(OS)とした。

 その結果、奏効率(RR)はA群で23.1%(95%信頼区間:11.1−39.3)、B群で30.6%(同16.3−48.1)だった。無増悪期間(TTP)は、A群で4.1カ月(95%信頼区間:2.8−5.6)、 B群で5.5カ月(同3.8−6.3)だった。全生存期間中央値は、A群で15.5カ月(95%信頼区間8.0−23.1)、B群で18.8カ月(11.7−24.5)だった。

 重篤な有害事象は比較的少なく、AB両群でその差はなかった。主な血液学的毒性として好中球減少(54%)、血小板減少(11%)、貧血(4%)が見られた。頻度の高かったものとして両群で50%前後に皮疹が出現したものの、グレード3以上の重篤なものはなかった。グレード3以上の有害事象については、グレード3の肺炎(A群2人、B群1人)、感染(A群4人、B群4人)がみられた。

 3クール以上治療を遂行できた比率(治療完了率)は、A群で70.7%、B群については71.1%だった。

 これらの結果から、GEM+S-1の併用は、進行性の非小細胞肺癌では実行可能で効果的であることが分かり、GEMの投与スケジュールについては、B群でより臨床的効果が高いことが分かった。

 主任研究者の里内氏は、「現在、ステージ3B−4の非小細胞肺癌患者では、白金系抗癌剤をベースに何かを加えるのがスタンダードになっているが、今回のB群での18.8カ月という全生存期間は、十分受け入れられるのではないか」と話す。さらに、「この治療法の何よりの利点は、患者のADLを損なわず、ほとんどが外来治療で実施できる点。副作用も重篤なものは少ない」と指摘する。

 今後は、白金系抗癌剤をベースにした群と今回のB群とを比較するフェーズ3臨床試験を予定している。