カナダ・トロント大学のPamela Goodwin氏

 乳癌の診断時に血液中のビタミンD欠乏がみられる患者は全体の3分の1以上に上り、ビタミンDが十分な患者に比べ、長期的な再発や死亡のリスクが高い。5月30日から米シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、カナダ・トロント大学のPamela Goodwin氏らが発表した前向きコホート研究によって明らかになった。

 ビタミンDは、核転写調節因子を通じて細胞の成長や分化の様々な局面の調節を行うことが分かっており、ビタミンDの欠乏は乳癌リスクを高めるといわれている。

 Goodwin氏らは、乳癌診断時のビタミンDレベルが予後に与える影響について明らかにするため、1989年〜96年にトロント大で乳癌と診断した患者512人(病期:T1-3、0-1、M0、平均年齢50.1歳、女性)を対象とし、それぞれ系統的な治療を行いながら、2006年まで平均11.6年間フォローアップした。

 乳癌診断時の血液検体は−80℃で冷凍保存しておき、患者の臨床的、病理学的な情報はカルテから入手した。

 その結果、癌と診断された時の血中の25-OHビタミンDレベルをdeficient(欠乏)(<50nmol/L)、indeficient(不十分)(50−72nmol/L)、sufficient(十分)(>72nmol/L)の3段階でみると、それぞれ、192人(37.5%)、197人(38.5%)、123人(24.0%)(放射線検定法で測定)で、3分の1以上が乳癌診断時にビタミンD欠乏状態だった。

 患者特性は、病期については、288人がステージ1、164人がステージ2、24人がステージ3。がんの悪性度(グレード)は、グレード1が77人、グレード2が212人、グレード3が180人。342人がホルモン感受性陽性だった。

 患者のうち、116人が乳房切除術を、396人が腫瘍摘出術Lumpectomy)を受けた。術後補助化学療法CXT)を受けたのは199人で、200人が術後ホルモン療法を受けた。予後については、116人(22.7%)に再発がみられ、106人(20.7%)は11.6年間のフォローアップ期間中に死亡していた。乳癌診断時のビタミンDレベルは患者因子に関連しており、低年齢(50歳以下)やBMI高値、高い腫瘍グレードなどで、よりビタミンDが少ない傾向にあった。

 次に、乳癌診断時にビタミンDが欠乏していた群と十分だった群において、5年後、10年後における遠隔無病生存率DDFS)と全生存率OS)を比較した。

 その結果、診断から10年後には、ビタミンDレベルが十分な群では83%が転移することなく、85%が生存していた。一方、ビタミンD欠乏群では、転移なく過ごしているケースが69%(対十分群のハザード比1.94、95%信頼区間:1.16−3.25、p=0.02)、全生存率も74%(同1.73、95%信頼区間:1.05−2.86、p=0.02)と有意に悪かった。主な死亡原因は乳癌に関連するものだった。

 ビタミンD不足とDDFS、OSとの相関は、年齢やBMI、腫瘍のステージなど他の因子とは独立しており、影響を受けなかった。

 Goodwin氏は、「ビタミンDの欠乏は、診断時の乳癌患者では日常的にみられる状態で、十分なビタミンDがある患者はたったの24%しかいなかった。今回の調査からは、ビタミンDの欠乏は、腫瘍の悪性度と相関していることが分かった上、長期的な再発や死亡のリスク増加との関連もみられた」と話す。

 しかしながら、現時点で乳癌と診断された患者が、サプリメントなどで積極的にビタミンDを摂取することに本質的なメリットがあるのかについては「分からない」という。同氏は、「実際の臨床場面で、骨の健康のための推奨量より高用量のビタミンD補充をアドバイスするのは時期尚早で、今後も検討が必要だ」と話す。

 現在、乳癌とビタミンDの相関に関する同様の調査研究が進行中であり、「そこでも今回と同様の結果が出れば、次は臨床でのランダム化比較試験に進むだろう」とGoodwin氏は語った。