新規チロシンキナーゼ阻害薬であるニロチニブを用いた、海外第2相臨床試験サブ解析が報告された。慢性骨髄性白血病患者について、BCR-ABLキナーゼ領域遺伝子解析を行ったところ、ニロチニブの感受性低下につながる変異が一部症例に認められたが、その発現頻度は全体の14%程度と少なかったことが分かった。米国Turin大学のGiuseppe Saglio氏らが、米シカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会ASCO)のポスターセッションで5月31日に発表した。

 フィラデルフィア染色体陽性の慢性骨髄性白血病(CML)患者に対する第一選択薬は、いうまでもなくチロシンキナーゼ阻害薬TKI)の先駆けとなったイマチニブグリベック)である。

 一方、選択性と阻害作用に優れる新規のTKIとして「ニロチニブ」が開発され、欧米ではイマチニブ抵抗性・不耐容CML患者の寛解維持を目的に、臨床応用が始まっている。

 ニロチニブの海外第2相臨床試験では、イマチニブ抵抗性または不耐容のCML患者を対象に、ニロチニブが12カ月間にわたって投与された。今回発表のサブ解析では、試験前後の末梢血サンプルを用いて、対象中281例におけるBCR-ABLキナーゼ領域点変異が検索された。

 比較的頻度の高い変異に注目した集計の結果、試験開始時(イマチニブからニロチニブへの切り替えが行われた時点)で既に、281例中114例(41%)に点変異が存在していた。この試験開始時における点変異は、イマチニブ不耐容例には比較的少なく(89例中9例)、同抵抗性例では比較的高頻度に認められた(192例中105例)。

 過去に、骨髄球系細胞株(Ba/F3細胞)を用いたin vitroアッセイが検討されており、それらの点変異は、ニロチニブ感受性に影響するものと、影響しないものに分類できることが分かっている。

 例えば、Y253HE255K/VF359C/VといったBCR-ABLキナーゼ領域の変異は、ニロチニブ感受性を低下させるため、50%阻害濃度が基準値の150nMを超えてしまう(以下、低感受性変異)。

 逆に、BCR-ABLキナーゼ領域のその他の点変異では、50%阻害濃度が150nM以下であり、ニロチニブ感受性を低下させないことが示唆されていた。そのような点変異は、M244V、L248V、G250E、Q252H、E275K、D276G、F317L、M351T、E355A、E355G、L387F、およびF486Sであった。

 さて、試験開始時において既に存在していた点変異だが、ニロチニブ感受性を低下させないものが多くを占めており、低感受性変異は一部症例に限定されていた(Y253Hが4%、E255K/Vが4%、F359C/Vが6%)。

 各々の臨床効果(MCyR・CCyR・MMR)は、感受性を低下させない変異群で59%・41%・30%であり、試験開始時に変異を認めなかった群の60%・40%・28%と比較して何ら変わりはなかった。試験期間内における病勢の進行率も34%と26%であり、両群間に顕著な差異はなかった。

 対して、ニロチニブ低感受性変異群では、MMRに至るものが少なく、CCyR達成はなく、MCyR率は低く、進行率が高かった。変異ごとの成績は、MCyR率が13%(Y253H)、43%(E255K/V)、18%(F359C/V)、進行率が38%(Y253H)、86%(E255K/V)、92%(F359C/V)であり、特に後者2つの変異では進行率の高さが目立っていた。

 ちなみに、ニロチニブ投与下で新たに低感受性変異を生じた例も、わずかながら認められた。演者は、今後とも症例を重ねて検討を続ける必要があるとした上で、「ニロチニブ低感受性変異は治療抵抗性に作用していたが、今回の解析でみる限り、発現頻度はさほど高くないものと考えられた」とコメントした。


【参考】変異表記の意味:「M244V」は、ABL遺伝子の244番目のアミノ酸が、M(メチオニン)からV(バリン)に変異したことを示している。
【用語】MCyR:細胞遺伝学的大寛解、CCyR:細胞遺伝学的完全寛解、MMR:分子遺伝学的効果