写真1 BIG 1-98試験の結果を報告するCoates氏

 乳癌術後補助療法としてのタモキシフェンレトロゾールを直接比較したBIG 1-98試験にて、長期投与下における心血管イベント合併率が詳細に分析された。両剤の比較において、血栓塞栓症はタモキシフェンの方が多く、全ての心疾患および脳血管障害には、薬剤間に有意差は認められなかった。国際乳癌研究グループ(IBCSG;International Breast Cancer Study Group)のA.S.Coates氏(写真)が6月3日、第43回米国臨床腫瘍学会で発表した。

 従来、各アロマターゼ阻害薬を用いた術後補助療法の試験結果から、タモキシフェンはアロマターゼ阻害薬よりも血栓塞栓が多く、アロマターゼ阻害薬ではタモキシフェンに比べて高コレステロール血症や心血管イベントが多いことが示唆されていた。
 
 そこで演者らは、BIG 1-98試験にてそれら有害事象の新たな解析を行った。同試験には「タモキシフェン5年群」、「レトロゾール5年群」、「タモキシフェン2年+レトロゾール3年群」および「レトロゾール2年+タモキシフェン3年群」が設けられ、1998年より登録が開始されていた。

 解析対象はタモキシフェンが投与された3988例、およびレトロゾールが投与された3975例だった。
 
 解析項目は、血清コレステロール値の変化、虚血性心疾患、全心疾患、高血圧症、一過性脳虚血発作を含む脳血管障害、および血栓塞栓症であった。これらについて、試験薬の投与開始から中止(または切り替え)1カ月後までの発症がカウントされた。観察期間中央値は、30.1カ月。両群間の比較に際しては、患者背景の調整がなされた。

 結果として、薬剤間に有意差が認められた項目は、血栓塞栓症(タモキシフェンで多い)のみだった。全ての心疾患および一過性脳虚血発作を含む脳血管障害に関しては、薬剤間に有意差が認められなかった。

 Grade3-5の事象に限定すると、血栓塞栓症の発症率はレトロゾールの0.9%に比べて、タモキシフェンでは2.3%と有意に高率を示した(p<0.0001)。一方、虚血性心疾患を含む心疾患の発症率は、タモキシフェンの1.4%に比べて、レトロゾールでは2.4%と有意に高かった(p=0.0036)。

 血清コレステロールの平均値は、タモキシフェンの方が投与早期から明確に減少したが、長期投与では両剤ともに減少傾向が認められた。

 Grade3-5の心疾患合併例で、高コレステロール血症との関連を調べたところ、高コレステロール血症を有した患者でその後の心疾患発症が目立っていた。また、この傾向はタモキシフェンに比し、レトロゾールでより顕著に現れていた。

 これらの結果から演者は次のようにコメントした。「従来の試験結果から、術後補助療法におけるレトロゾールの有効性はタモキシフェンに勝るとされている。一方、タモキシフェンで得られる心血管保護作用は、アロマターゼ阻害薬で劣るとされてきたが、心疾患の発症頻度は極めて低く、リスク・ベネフィットの観点からそれが薬剤選択に影響するとは思えない。ただし、心血管イベントのハイリスク患者に対しては、今後の更なる検討が必要と示唆された」。