写真1 W. Kimryn Rathmell氏

 腎癌では、癌抑制遺伝子の一つであるvon Hippel-Lindau遺伝子(VHL遺伝子)の変異について、その臨床上の意義が明らかになりつつある。米国ノースカロライナ大学のW. Kimryn Rathmell氏(写真)が6月1日、第43回米国臨床腫瘍学会で、これまでの知見をまとめて紹介した。

 Rathmell氏によると、腎癌のほとんどは淡明細胞癌で60〜70%を占め、そのうちの58%にVHL遺伝子の変異が認められていた。そのため、VHL遺伝子の変異と腎癌発症との関係について解明が進められてきた。

 これまでの研究で、VHL遺伝子は癌抑制遺伝子であり、かつ発癌の初期過程に関わることが分かっている。また、VHL遺伝子は転写調節因子である低酸素環境適応因子(HIF;hypoxia inducible factor)の分解に関与し、一方HIFは、腫瘍細胞の増殖因子であるTGFαに働き、腫瘍血管の増殖を促すPDGFの遺伝子やVEGFの遺伝子の転写を促進することも明らかになっている。

 つまり、VHL遺伝子に変異が起こるとHIFを分解する働きが低下するため腫瘍細胞の増殖因子が過剰生産されることになり、腎細胞癌の発生や増悪の原因になると考えられるようになったわけだ。

 すべての腎癌の発症と関係があるわけではないが、腎癌治療の突破口の1つとして、VHL遺伝子の変異に照準を合わせた分子標的薬の開発に拍車がかかるに違いない。