西澤貞彦氏

 健康な企業従業員に対し、年1回の癌検診に加えてFDG-PETによる検査を導入したところ、例年の2倍を超える初発癌を発見でき、その6割近くがステージ1だった。浜松PET検診センター(静岡県浜松市)院長の西澤貞彦氏が6月5日に行われたASCO2006のポスターセッションで報告した。

 西澤氏らは、光学機器メーカー大手の浜松ホトニクス社の35歳以上の健康な従業員ボランティアを対象として、FDG-PET(フルオロデオキシグルコースを造影剤として用いる陽電子放射診断撮影)による癌検診の有効性評価を目指した前向き研究を実施した。

 対象は、応募者から癌の既往がある20人を除いた1197人(平均46.7歳)。この全員が2003年8月〜2004年7月に実施した第1回検診を受けた。第2回は2004年7月〜2005年7月に実施し、第1回の受検者のうち1158人が受けた。ただし、2回目の検診を受けなかった39人についてもすべて検査を実施した。

 その結果、1年目に18人(対象者の1.5%)、2年目には4人(同0.3%、別途検査を受けた者を含む)に癌がみつかった。このうち検診で癌が見つかったのは初年が17人、2年目は2人。初回検診で癌が発見された17人のうち11人がPETで陽性、6人は陰性だった。2年目には検診で2人、検診以外で2人の計4人に癌が見つかったが、PETでの陽性確認例はなかった。検診で癌が見つかった19例のうち11例(約58%)がステージ1だった。

 同社では、研究の一環として、胸部CT、脳と骨盤部のMRI、上部消化管などの超音波検査腫瘍マーカーを含む血液・尿検査、PET検診の補正値を得ることを目的とした低線量の全身CTなどを実施している。過去5年間(2001〜2005年)に年平均で従業員全体の0.44%に当たる8人の癌発症者が発見されている。

 それにもかかわらず、PET検診開始の初年には例年を大幅に超える18人の癌発症者が見つかり、PET検診の感度の高さを見せつけた。2年目には画像検診による陽性例はなく、初年で発見し得る症例は発見できた可能性を指摘していた。

 問題点もある。擬陽性が多い点がそのひとつだ。今回の試験では、11例の真陽性(true-positive)に対して、擬陽性が80例にのぼった。原因は消化管や尿などの貯留や子宮筋腫良性腫瘍などで、月経周期の確認や骨盤部MRI画像の参照などによって確認し得た。

 ただし、本研究の検診で検出された多くの良性腫瘍でも大きなものや悪性化が疑われるものがあり、うち7例は外科的切除を要した。これらを含め、今回の検診では、早急な治療を要する例が、35〜50歳でほぼ2%、50歳以上では3%以上になった。

 検査費用が極めて高額で、1人・年あたり十数万円以上の費用がかかるのも大きな課題だ。費用便益が明示され、検査自体のコストダウンが実現しないと普及は困難だろう。西澤氏らは、「PET検診の大規模前向き研究は他に例がなく、さらに研究を継続してエビデンス構築を目指したい」という。