Tsang氏

 イマチニブ慢性骨髄性白血病CML)や消化管間質腫瘍GIST)の基本治療薬であり、疾患の再発、進展の抑制のためには、服薬コンプライアンスを維持する必要がある。しかし、米国で初めて実施された今回の調査結果によると、イマチニブの服薬コンプライアンスは75%程度にとどまっていた。また、医療経済学的な側面からみてもコンプライアンスの低下は大きな損失であることが示され、より徹底した患者教育の必要性が指摘された。こうした内容についての3つの演題が、6月5日に行われたASCO2006のポスターセッションで報告された。

 Tsang氏(写真上)は、ベリスパン社が提供するデータベースを用い、米国の患者の1年間のイマチニブの服薬コンプライアンスと服薬Persistency(固執性)について調査した結果を報告した。

 調査対象はCMLとGIST患者4043人。全体の服薬コンプライアンスは75%であり、90%以上コンプライアンスを維持している患者は41%であった。また、初回処方量が300mgまたは400mgの患者のコンプライアンスはいずれも89%と高く、処方回数1〜3回目は13〜14回目に比べてコンプライアンスが低かった。

 また、算出された実際の患者服用量(DACON)は処方箋の薬剤量より20%少なく、Persistencyの平均は255日、1年間通して処方量を継続的に服用している患者は57%であった。

 300〜400mg/日の投与量では十分に腫瘍を消失できない恐れがある。投与初期にコンプライアンスが低下する患者が多いことは、初期用量のイマチニブの反応性の低さや副作用の対応の不十分さが関連している可能性があり、患者プログラムやコミュニケーションの改善が提案された。

Feng氏

 Feng氏(写真下)は米国の大規模ヘルスケアプランの健康保険請求データベースから15カ月以上イマチニブを投与していた患者を抽出し、その内、CML(n=286)とGIST(n=34)患者を対象に、服薬コンプライアンスの状況を検討した結果を報告した。イマチニブの服薬コンプライアンスは約75%で、30%の患者は1カ月以上連続して休薬していた。

 さらに、イマチニブの服薬コンプライアンス及びPersistencyの低下に関連する予測因子を多変量解析により検討したところ、(1)年齢(>51歳)、(2)女性、(3)癌の重症度が高い、(4)処方薬数が多いということが関連していたと報告した。

 Henk氏は、Feng氏らと同様の調査から、高齢者向け医療保険であるMedicare に加入している患者を除外した307人を対象に、服薬コンプライアンスと医療コストの関係を検討した結果を報告した。CML患者(n=277)とGIST患者(n=30)の服薬コンプライアンスの状況は、それぞれ「<50%」が20.9%、20.0%、「50〜90%」が25.3%、30.0%、「90〜100%」が53.8%、50.0%を占めていた。

 この3群間の最初1 年間の総医療コストを比べると、「<50%」は16万5116ドル、「50〜90%」は5万4911ドル、「90〜100%」は4万2204ドルと、「<50%」の患者では極めて医療コストが高かった。そして、服薬コンプライアンスを10%改善すると、医療コストは5%低下できることが明らかになった(p=0.021)。疾患関連医療コストに限定しても同様の関係が認められた。

 イマチニブの服薬コンプライアンスの向上は、患者の臨床上のアウトカムを改善するだけではなく、癌による社会的な医療コストを削減する可能性がある。

 これらの一連の発表が示すように、CML、GIST患者の基本的治療薬であるイマチニブの良好な服薬コンプライアンスは、既に多数得られているエビデンスと同様の疾患の再発・進展の抑制という恩恵をもたらすことが確実であり、また社会的にも医療コストの削減につながる可能性が高い。現状の服薬コンプライアンスは75%程度であり、患者教育の徹底、指導プログラムの改善などが提案された。


注)ここで、
服薬コンプライアンス=実際の服用量(mg)/処方された薬剤量(mg)
Persistency=コンプライアンス(服薬遵守)の最大継続日数
DACON=処方箋の1日用量×処方日数/実際調剤され薬を患者が受け取った日から算出した服薬日数
とした。