Susan Dimitry氏

 日本でも近年、癌の発症や転移の本人告知は珍しくなくなった。しかし、告知の内容や時期については、常に慎重な配慮が求められる。実際に転移癌を発症した癌患者に対する調査から、治療や症状についての情報は積極的な提供を希望する一方で、余命や短期の生存率、死については、患者が聞きたいかどうか、事前に了解をとってほしいと考えていることが明らかになった。カナダとオーストラリアの患者を対象にした研究成果で、カナダのジュラビンスキー癌センター(オンタリオ州ハミルトン)のSusan Dimitry氏が6月6日に行われたASCO2006のポスターセッションで報告した。

 Dimitry氏らは、カナダとオーストラリアで調査時点の3〜6カ月前に転移癌の診断を受けた患者に対し、自記式のアンケート調査を実施した。回収率はオーストラリアが58%、カナダが57%で、それぞれ126人、117人から回答を得た。オーストラリアの回答者は平均年齢が62.8歳、発症している癌は、多い順に乳癌(25%)、大腸癌(18%)、前立腺癌(16%)、肺癌(10%)だった。カナダは平均年齢が63.2歳、発症癌種は、大腸癌(44%)、乳癌(30%)、肺癌(26%)だった。

 調査では、(1)治療目標、(2)症状と副作用、(3)余命、(4)死についての説明の各項目について、「医師は患者が告知を希望するかどうかを確認すべきか」と「いつ告知を希望するか」を聞いた。

 その結果、治療目標についてはカナダ人患者の74%(オーストラリア人は83%、以下同)が、「医師はただ告知してくれればよい」とし、承諾を不要と考えていた。「聞きたいかどうか確認してからにしてほしい」「患者が聞いたら答えてほしい」は合わせて26%(18%)だった。症状や副作用についても承諾不要という回答が80%(80%)を占め、「要確認」と「聞いたときに回答」は20%(20%)に過ぎなかった。

 これに対して、余命の告知については、「ただ告知」は55%(53%)だったのに対し、「要確認」と「聞いたときに回答」を希望する患者が36%(38%)と4割近くにのぼった。治療目標や症状などでは皆無に等しかった「医師と話し合いたくない」という回答も9%(9%)あった。

 さらに、死についての問題を話し合うことについては、「ただ告げる」ことを希望したのは40%(40%)だったのに対し、「要確認」「患者が聞いたとき」は48%(45%)を占め、比率が逆転した。

 告知の時期についても類似の傾向が見られた。転移の事実や症状・副作用については8割以上が「診断後の最初の機会」を希望していたのに対し、余命の告知や死についての対話では、「後で希望するとき」「希望しない」が多い傾向が見られた。全体として、両国の調査結果に顕著な差は見られなかった。

 Dimitry氏は、「進行癌の患者は、治療や症状などについての情報を強く求めている。一方で、短期の生存率や死については、話し方や伝える時期に十分な配慮が必要だ」としていた。