英国Dundee大学Division of Medicine and TherapeuticsのChak Lau氏

 関節リウマチ(RA)変形性関節症(OA)に代表される筋骨格系疾患が、アジア太平洋地域で人々の日常生活や医療経済上、大きな負担になっているという。英国Dundee大学Division of Medicine and TherapeuticsのChak Lau氏が、世界保健連合(WHO)国際リウマチ学会議(ILAR)共同の国際疫学研究であるCOPCORD(Community Oriented Program for Control of Rheumatic Diseases)スタディの成果などを基に、横浜で開催されたアジア太平洋リウマチ学会(APLAR2008)の最終日9月27日のファイナルセッションで報告した。

 アジア太平洋地域の人口は37億人以上に達し、世界人口の6割を超える。しかも、多様な民族と文化が混在し、地域間の経済格差も大きい。Lau氏はまず、中国の25の省と市の成人24万1169人を対象に実施した38の疫学調査結果を示した。それによると、筋骨格系の有病率は調査地域によって11.6〜46.4%とかなり幅が広い。疾患別でも同様に、OA5.1〜20.8%、強直性脊椎炎(AS)0.2〜0.54%、乾癬性関節炎(PsA)0.01〜0.1%、通風0.15〜1.98%、軟部組織リウマチ2.5〜5.7%と差が大きい。こうした傾向は、アジア各国でみられるという。

 その理由として、中国のような多民族国家では民族・人種の違いが考えられるとする。例えば台湾における通風の有病率調査では、先住民族の男性は15.2%だが、移住者では0.3%でしかない。

 生活環境や経済状態が異なる都会と地方の差も先進国とは比較にならないほど大きい。同じく台湾の調査では、地方の関節リウマチ有病率は0.26%だが、都会は0.93%になるという。ところが、フィリピンのデータではそれが逆転し、地方のほうが多くなる。特に軟部組織リウマチは都会で3.8%、地方で7.1%と差が大きい。

 インドネシアでは、また様相が異なる。関節痛の有病率が都会で31.3%、地方で23.6%と多いが、それによる休職の経験をみると、都会では7.8%であるのに対し、地方では75%と驚くべき数値になる。

 Lau氏はまた、聖マリアンナ医科大学の須賀万智氏らの文献を引用し、日本人にも筋骨格系疾患が多く、日常生活に影響する痛みを抱える人口が多いことを指摘した。須賀氏らは、日本人成人人口の41.2%が筋骨格系の痛みを有し、8.9%は痛みのため日常生活に支障があることを報告している。

 筋骨格系疾患は医療経済面の負担も大きい。2003年の香港のデータでは、OAの患者総数12万人の年間医療費が約4億5600万米ドルに達している。これは香港のGDPの2.8%に当たる。シンガポールでも、1人当たりの年間医療費が平均年収の約6%に当たる2208米ドルに達している。

 世界保健機関(WHO)は2003年、これまでの疫学データを基に、アジア地域では骨粗鬆症に伴う腰椎の骨折が今後急増するという予測を発表した。これはアジアの特異的な傾向だという。世界的に進行する高齢化がアジアでも大きな問題になっているが、高齢化は筋骨格系疾患の増大をも意味するという。

 Lau氏は、地域間格差が激しいアジアでは疫学調査が難しく、現在のデータはアジアの状況を正しく反映していない可能性が高いことを指摘、今後は各国が協力して途上国のデータ収集を進めることが、アジアの医療環境向上のために重要と総括した。