愛知医科大学リウマチ科教授の山村昌弘氏

 高齢の関節リウマチ(RA)患者では腎障害の可能性などを考慮して、抗リウマチ薬(DMARDs)生物製剤の使用が控えられ、結果としてリウマチのコントロールが不十分になる傾向がある。しかし、長期の薬物治療を行っているRA患者でも慢性腎疾患(CKD)が多いというエビデンスは得られなかった。愛知医科大学リウマチ科教授の山村昌弘氏らが、9月23〜27日に横浜で開催されたアジア太平洋リウマチ学会(APLAR2008)のシンポジウム「Gerontrogy and Rheumatology」で報告した。

 本検討の対象としたRA患者は、一定期間に外来受診した240例(男性59人、女性181人)で、平均年齢は59.4±14.2歳、96人(40%)が65歳以上、平均罹病期間は10.0±9.3年だった。

 治療薬の内訳は、非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs124例(52%)、ステロイド剤149例(62%)、メトトレキセート(MTX)196例(82%)、TNF阻害剤38例(16%)。ステロイド剤はプレドニゾロン換算で3.7±2.4mg/日、MTXは7.2±2.4mg/週で処方されていた。

 対象患者の腎機能評価には、推定糸球体ろ過率(eGFR)Cockcroft-Gault式によるCG-GFRシスタチンC値を用いるとともに、1.73m2当たりeGFR値が60mL/分以下を慢性腎疾患(CKD)と定義し、使用薬剤別に各項目の平均値をまとめた。

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)については、使用者のCRPが1.8±2.9mg/dLで、非使用者の0.88±1.1mg/dLに比べて高値(P=0.0007)だったが、その他の項目においては、有意な差はみられなかった。

 またステロイドでは、使用者のCRPは1.6±2.6 mg/dLで非使用者の0.83±1 mg/dLに比べて有意な高値(P=0.013)を示したほか、CG-GFRは使用者81±32mL/min、非使用者94±27 mL/min(P=0.002)、シスタチンCは使用者 1.1±0.39mg/L、非使用者0.89±0.21 mg/L(P=0.0002)と有意差がついた。

 これは、NSAIDs、ステロイドが、活動性の高いRA患者でより多く処方されているためと推測された。しかし、MTXの使用者においては非使用者との有意な差は認められなかった。

 一方、TNF阻害薬についてみると、S-Cr値は使用者で0.59±0.13mg/dLであるのに対して非使用者では0.68±0.21 mg/dL(P=0.009)、eGFRは使用者で88±19mL/minに対して非使用者では78±23 mL/min(P=0.009)、CG-GFRは使用者の100±25mL /minに対して非使用者は83±31 mL /min(P=0.0006)、シスタチンCでは使用者の0.88±0.18mg/Lに対して非使用者では1.0±0.36 mg/L(P=0.02)と、むしろ使用者の腎機能のほうが良好な傾向が示された。平均年齢は使用者が51±12歳だったのに対し、非使用者は61±14歳だったことから、治療開始時から腎機能を考慮し、若い世代により多く使われていることが推測された。

 同院のRA患者におけるCKD罹病率は、日本の一般人口の有病率と有意差はなかった。そこで、65歳未満(144人)と65歳以上(96人)の2群に分け、腎機能などを比較すると、高齢群で腎機能の低下、S-Cr高値、低体重が示された。また、CG-GFRとeGFRの数値からは、65歳以上の約3割に腎障害が疑われた。

 一方、両群の使用薬剤を調べると、NSAIDsは65歳未満の49.3%に対して65歳以上で56.3%、ステロイド剤は55.6%に対して71.9%、MTXは83.3%に対して79.2%と大きな差は認められなかったが、TNF阻害薬は23.6%に対して4.2%と著明に少なかった。またステロイド剤とMTXの処方量も65歳以上は65歳未満の半量だった。

 以上の結果から、高齢患者では腎障害の可能性を考慮し、DMARDsやTNF阻害薬の使用が限定的となるため、リウマチのコントロールが不十分であることが推測された。しかし、長期の薬物治療にもかかわらず、RA患者にCKDが多いというエビデンスは得られなかった。山本氏らは、より高齢かつ低体重のRA患者においては、CG-GFRによる腎機能の評価が有用であると示唆するに留めた。