産業医科大学の田中良哉氏

 従来の抗リウマチ薬(DMARDs)による関節リウマチ(RA)治療は、臨床症状を改善することができても、関節破壊の進行を抑えることはできなかった。しかし、抗TNF薬の登場により、関節破壊の進行抑制が可能になり、さらには「ドラッグ・フリー寛解」も夢ではなくなってきている。産業医科大学の田中良哉氏は、このほど横浜で開催されたアジア太平洋リウマチ学会(APLAR2008)のシンポジウムで9月25日、わが国の実地臨床下におけるインフリキシマブの治療成績を紹介し、RA治療のパラダイムシフトが現実に起こっていることを強調した。

 国内の3施設(産業医科大学、東京女子医科大附属膠原病リウマチ痛風センター、埼玉医科大学総合医療センター)においてインフリキシマブ療法を受けたRA患者410例を対象に、本剤の有効性をレトロスペクティブに検討したRECONFIRM-2試験では、約75%の患者が54週間にわたるインフリキシマブの投与を継続することができた。

 投与開始時には高疾患活動性DAS28-CRP≧4.1)の患者が90%を占めていたが、2週後には30%にまで減少し、54週後には27.6%の患者が寛解(DAS28-CRP<2.3)に至った。また本試験では、年齢、リウマトイド因子のほかに、DAS28-CRPがインフリキシマブの有効性に影響を及ぼす因子であることが示されたことから、田中氏は「インフリキシマブは疾患活動性が上昇する前に開始することが望ましい」と述べた。

 RECONFIRM-2試験の対象のうち、投与前後のX線所見を評価できた67例を対象としたRECONFIRM-2J試験では、インフリキシマブの関節破壊抑制効果が検討されている。インフリキシマブ投与前の総Sharpスコア(TSS) の年間進行度は21.33ポイントであったが、投与54週後には-0.03ポイントまで低下し、関節破壊がほぼ完全に抑制されていた。

 こうした知見に基づき、本年2月に日本リウマチ学会から発表された「RAに対するTNF阻害療法施行ガイドライン改訂版」では、圧痛関節数6以上、腫脹関節数6以上、CRP2.0mg/dLあるいはESR28mm/時以上という従来の基準を満たさなくても、X線所見で骨びらんが認められる症例あるいはDAS28-ESR>3.2の症例であれば、抗TNF薬の投与を考慮すべきとされた。すなわち、RAの治療目標は、従来の臨床症状の改善から関節破壊の抑制にシフトしたといえる。

 さらに、寛解導入後にインフリキシマブの投与を中止することができれば、患者の経済的な負担を軽減することができる。産業医科大では、他のDMARDsやステロイドを順次中止した後に、インフリキシマブによって寛解(DAS28-ESR<2.6)が24週を超えて持続した場合、インフリキシマブの休薬を検討しているが、罹病期間が短く、疾患ステージが早期で、ステロイド使用量が少ない症例では休薬の可能性が高いという。

 現在、インフリキシマブにより低疾患活動性(DAS28<3.2)が24週を超えて持続した症例を対象に、インフリキシマブ休薬後の臨床転帰を検討するRRR(Remission induction by Remicade in RA)試験が進行中である。現時点の解析では、72例中61例(84%)が低疾患活動性に至ってインフリキシマブが休薬され、うち25例は再燃をみることなく12カ月以上、休薬が持続している。

 田中氏は、「抗TNF薬によって臨床的寛解、画像的寛解が得られるようになった今日、次なるステップとして寛解率の向上、ドラッグ・フリー寛解がRA治療の目標となるであろう」と述べ、講演を締め括った。