オーストリア・ウィーン医科大学のJosef S. Smolen氏

 関節リウマチ(RA)の治療の標的となるのは、RA発症・進行の経路に関連する分子群である。これらの分子群には細胞表面に発現する機能関連分子分子マーカーサイトカイン増殖因子細胞内シグナル伝達系転写に関与する細胞内分子などが含まれる。横浜で開催されているアジア太平洋リウマチ学会(APLAR2008)で9月24日に行われたシンポジウム“Future Prospective New Drug”で、オーストリア・ウィーン医科大学のJosef S. Smolen氏は、RA治療を目的とした新しい生物学的製剤を標的分子ごとに分類し、その開発状況について解説した。

 TNFαを標的としたインフリキシマブエタネルセプトアダリムマブが臨床導入され、RA治療は大きく前進した。また、TNFαに対する抗体のFab断片のみをPEG化したセルトリズマブが開発中であり、RAPID2試験ではMTX併用下で有効性が確認された。

 最近では、抗TNFα製剤に抵抗性の症例に対する二次療法が注目されているが、アバタセプトリツキシマブトシリズマブなどを用いた二次療法によるACR20/50/70改善率は順に50%、25%、10%程度であり、一次療法に比べると改善率は劣るものの、一定の有効性が得られることが報告されている。

 一方、IL-1阻害薬の有効性は限定的であった。その他にIL-12/IL-23、IL-15、IL-17、IL-22などのサイトカインが標的分子として候補に挙がっている。

 最近ではB細胞阻害薬も注目されている。抗CD20抗体であるリツキシマブはわが国ではB細胞性非ホジキンリンパ腫に適応を有するが、欧米では抗TNFα製剤に抵抗性のRA患者に適応を有しており、抗CD22抗体であるエプラツズマブも開発中である。さらに、B細胞表面受容体のリガンドであるBLySを阻害するベリムマブ、APRILを阻害するataciceptも、臨床試験で一定の成績が得られている。

 一方、T細胞阻害薬として、T細胞への抗原提示を阻害してT細胞の活性化を阻害するアバタセプトの他に、抗CD4抗体や抗CD25抗体、LTb受容体(baminercept)、活性化T細胞の血管内皮への接着を阻害するICAM-1/VCAM-1阻害薬などの開発が試みられている。

 そのほかには、免疫複合体を標的としたアプローチ、関節破壊に関連するRANKLに対する抗体療法、細胞内シグナル伝達系に関連するキナーゼや転写因子(p38、JAK-3、Syk)の阻害薬、抗原提示細胞を活性化するToll-like受容体の阻害薬などが開発中である。

 Smolen氏は、作用機序の異なる新しい生物学的製剤が精力的に開発されているが、臨床試験ではすべての患者に有効性を示すわけではなく、既存の生物学的製剤を上回る有効性は認められていないことを指摘した。その理由として同氏は、RAの病態が不均一であること、疾患活動性によって治療反応性が障害される可能性、RAの病因となる経路が患者ごとに異なることなど挙げた。

 また同氏は、標的とする分子が異なる新しい生物学的製剤の導入により、寛解を達成するRA患者の数は増加すると考えられ、5〜10年後にはRA治療はさらに著しく進歩することが期待されると述べて、講演を締めくくった。