カナダToronto Western病院のMurray B. Urowitz氏

 SLE患者の死亡率はこの30年超で激減、疾患活動性も低下するなど予後は改善したが、冠動脈疾患を含むアテローム性血管疾患は増加傾向にある――カナダにおける1000人超のSLE患者の追跡をもとにした、SLE治療の長期的な動向が示された。9月23日から横浜で開催されているアジア太平洋リウマチ学会(APLAR2008)のシンポジウムで、カナダToronto Western病院のMurray B. Urowitz氏が報告したもの。

 Urowitz氏らは、1970年から30年超にわたってSLE患者を追跡した前向き研究を実施した。2005年までの自施設の患者を9年ずつ4群に分け、生存率、疾患活動性、障害蓄積、アテローム性の冠動脈疾患(CAD)の発症頻度の4項目を比較した。CADについては、臨床的イベントだけでなく、機能検査値など無症候性の変化についても検討した。

 まず生存率を標準化死亡比(SMR:Standardized Mortality Ratio)で比較したところ、A群(1970-78年、患者総数228人)は13.84、B群(1979-87年、364人)6.45、C群(1988-96年、260人)4.24、D群(1997-05年、389人)3.84となり、死亡率の大幅な減少が示された。

 疾患活動性についても、SLE疾患活動性指数SLEDAI:SLE Disease Activity Index:3〜5が中等度、6以上が高度)の修正平均値で比較すると、A群の8.45からD群では5.99へと減少した。

 しかし、SLE重症度指数SDI:S LICC/ACR Damage Index)でみた障害蓄積については、経年的な変化は認められなかった。

 また、1970-04年のSLE患者1087人をコホートとしてCADの発症頻度を算出すると、前半561人のイベント発生率が9.6%(54人)だったのに対し、全体では10.9%(118人)で、後半にかけて上昇していることが示唆された。なかでも狭心症は急増していた。

 そこで女性患者についてリスクファクターを検討したところ、SLE女性患者はCADを有さない女性に比べ、高血圧糖尿病VLDLコレステロール高値、トリグリセリド高値、ホモシステイン高値をきたしやすく、早期閉経活動性低下の率も高まることが分かった。これらの因子は、冠動脈疾患や死亡率を高めることになる。

 さらに、CADの既往がないSLE患者122人について心筋灌流イメージング(MPI:Myocardial Perfusion Imaging)を実施したところ、46人(37.7%)に灌流欠損が観察された。しかも、検討期間中(中央値8.7年)に15人がCADを発症した。このほか、潜在的障害の因子としてLDLコレステロール値と高感度CRP値についても検討したが、SLEを規定する因子としての結果は得られなかったという。