オーストラリアHeart Research InstituteのBen J. Wu氏

 コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬はHDL増加を介し、血管内皮細胞の増殖能遊走能管形成能を増強させることが示唆された。バルーンカテーテルで血管内皮傷害を誘発したモデル動物を用いた検討によって示されたもの。オーストラリアHeart Research InstituteのBen J. Wu氏らが、11月7日までロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で発表した。

 HDLはコレステロールを動脈壁から引き抜くなど、さまざまな機序によって動脈硬化を予防することが知られている。また、血管炎症酸化を抑制し、内皮の修復や内皮機能改善を促進させる作用もある。一方、CETPはHDL中のコレステロールをVLDLやLDLに転送することで、HDLやLDLの量や質を調整する働きがある。そのため、CETP活性の阻害は、HDLレベル上昇のための効果的な治療戦略となり得る。そこで、Wu氏らはCETP阻害薬des-fluoro-anacetrapibを用い、CETP活性阻害と血管内皮の修復・機能改善についてNew Zealand White(NZW)ウサギで検討した。

 NZWウサギ(2.5kg未満)を、通常食を与える群(対照群)、通常食にdes-fluoro-anacetrapib 0.07%を追加して与える群(0.07%群)、同じく0.14%を追加して与える群(0.14%群)の3群に分けた。2週後にはバルーンカテーテルで腹部大動脈の内皮を剥離、8週後に屠殺しCETP阻害によるさまざまな作用を検討した。

 その結果、CETP活性は0.07%群、0.14%群で対照群に対し、それぞれ81%、92%有意に低下していた(ともにP<0.05)。また、apoA-I濃度は同じく38%、47%有意に増加しており、HDLコレステロールは同じく77%、86%有意に増加していた。さらに、総コレステロールにおけるHDL分画が増え、HDLサイズも増加していた(いずれもP<0.05)。

 バルーンで傷害した大動脈の血管内膜面積を見ると、0.07%群と0.14%群は対照群に対しそれぞれ37%、51%有意に減少し(ともにP<0.05)、肥厚が抑制されていたが、血管中膜面積には差がなかった。

 傷害した大動脈の再内皮化作用をCD31免疫染色によって評価したところ、内皮細胞のCD31陽性率は対照群の43%に対して、0.07%群は69%、0.14%群は76%と、いずれも有意に高かった(いずれもP<0.05)。また、アセチルコリンで血管弛緩反応を見たところ、CETP阻害薬により弛緩能が有意に増すことも示された。

 さらに、ヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC)に3群のウサギから単離したHDLをそれに応じたapo A-I濃度で投与したところ、0.07%群、0.14%群のいずれにおいても、CETP阻害薬によるHDLレベル上昇に伴い、内皮細胞の増殖能、遊走能、管形成能が有意に増強され(すべてP<0.05)、かつ用量依存的であった。

 以上からWu氏は、「今回のモデルウサギにおけるHDL増加に伴う血管内皮機能の改善作用により、CETP阻害薬の心保護作用の一部は説明できるのではないか」との考えを示した。

(日経メディカル別冊編集)