デンマークCopenhagen University HospitalのMarianne Benn氏

 非空腹時レムナントコレステロール値HDLコレステロール(HDL-C)値とは独立した虚血性心疾患発症のリスク因子であり、1mmol/L増加するごとに2.8倍高まることが示された。遺伝子タイピングを7万例以上で行い、脂質値に関連する遺伝子変異と虚血性心疾患発症との関係を解析した結果明らかになった。11月7日までロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)でデンマークCopenhagen University HospitalのMarianne Benn氏らが報告した。

 レムナントコレステロールの増加はトリグリセリド(TG)リッチなリポ蛋白の増加だけでなく、HDL-Cの減少とも関連しており、これらはいずれも虚血性心疾患と関連することが知られている。しかし、レムナントコレステロールが虚血性心疾患のリスク因子であるのか、マーカーであるのかは明らかになっていない。そこで、デンマークの3つのコホート研究であるCopenhagen City Heart Study(CCHS、約1万1000例)、Copenhagen Ischemic Heart Disease Study(CIHDS、約1万6000例)、Copenhagen General Population Study(CGPS、約4万7000例)に登録された合計約7万4000例を対象に検討した。

 CCHSとCGPSの登録者を非空腹時レムナントコレステロール値で5分位に分け、虚血性心疾患発症のハザード比を見たところ、非空腹時レムナントコレステロール値が上昇するほど高くなっていた。第1分位(0.4mmol/L未満)を対照とした場合、第5分位(1.1mmol/L超)のハザード比は1.5(1.3-1.8)と有意に高値だった。同様にHDL-C値で見ると、HDL-C値が減少するほどハザード比は高まり、第1分位(2.0mmol/L超)を対照とした場合、第5分位(1.2mmol/L未満)は2.1(1.8-2.3)と有意に高かった。

 続いてメンデル無作為化(Mendelian randomization)という手法によって、レムナントコレステロールおよびHDL-Cと虚血性心疾患発症との関係を解析した。同手法は、遺伝子変異などによって対象を無作為に群別化し、疾患発症などとの関係を検証するもので、無作為化比較試験(RCT)と同様に、他の交絡因子や背景が両群間で同様な分布になると考えられる。今回は、レムナントコレステロール値上昇に関連する遺伝子としてTRIB1、GCKR、APOAVを、レムナントコレステロール値上昇かつHDL-C値低下と関連する遺伝子として4種類のLPLを、HDL-C値低下と関連する遺伝子としてLIPCと2種類のABCA1を用いた。

 CCHS、CGPS、CHIDSの登録者を対象に、レムナントコレステロール値上昇に関連する変異アレル数別に虚血性心疾患発症のハザード比を求めたところ、変異アレル数が0〜1の群を対照とすると、同3〜6の群は1.15(1.09-1.21)と有意に高かった。同様に、レムナントコレステロール値上昇かつHDL-C値低下でハザード比を求めると、変異アレル数が0〜1の群を対照とした場合、同3〜4の群は1.29(1.18-1.42)と有意に高値だった。一方、HDL-C値低下に関連する変異アレルでは発症リスクに差は見られなかった。

 さらに、操作変数解析(instrumental variable analysis)により遺伝子変異を基に検討したところ、非空腹時レムナントコレステロールが1mmol/L(39mg/dL)増加するごとの虚血性心疾患発症のハザード比は2.8であり、HDL-Cの減少とは独立していた。

 これを踏まえBenn氏は、「TGリッチなリポ蛋白粒子の増加が、虚血性心疾患の原因であることを示唆している」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)