英国Imperial College LondonのSimon A Thom氏

 心血管イベントの予防として、アスピリン、スタチンおよび2種類以上の降圧薬を含む多剤混合薬を投与することで、通常の治療をした場合に比べ、アドヒアランスが33%改善し、収縮期血圧(SBP)とLDL-コレステロール(LDL-C)も有意に改善することが示された。インドと欧州の医療グループが取り組んでいるUMPIRE試験の成果で、英国Imperial College LondonのSimon A Thom氏が11月3日から7日までロサンゼルスで開催された第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で報告した。

 心血管疾患(CVD)患者の多くは、推奨される投薬を長期にわたって服用できていないことが報告されている。PURE Studyでは、高所得の国々ですら、3分1から半数の患者は、急性疾患発症後1年以上、推奨される薬すべてを服用することがなく、また、現在最も心血管死が多く発生している低所得の国々では、こうした「治療ギャップ」はしばしば90%を超えることが明らかにされた。

 そこでUMPIRE試験では、適応薬(アスピリン、スタチンおよび2種類以上の降圧薬)を多剤混合薬(FDC)として投与することで、アドヒアランスを高め、SBPとLDL-Cを改善することができるかどうかを検証した。

 対象は、CVDの既往があるかあるいは5年CVDリスクが15%以上の患者2004人。これをFDCによる治療群(FDC群、1002人)と通常の治療群(通常群、1002人)に無作為に割り付け、比較検討した。

 FDCは、バージョン1として、アスピリン75mg、シンバスタチン40mg、リシノプリル10mg、およびアテノロール50mgから構成された。また、バージョン2として、アテノロールの代わりにヒドロクロロチアジド12.5mgの構成も用意した。

 主要転帰は、指示された服薬の順守率(アドヒアランス。抗血小板薬、スタチンおよび2種類以上の降圧薬についての自己申告)とSBPおよびLDL-Cの変化とした。

 15カ月(中央値)の追跡の結果、アドヒアランスはFDC群が86%、通常群が65%となり、FDC群が有意に高かった(RR:1.33、95%信頼区間[CI]:1.26-1.41、P<0.0001)。2群間の治療効果を比べると、FDC群は通常群に対して33%改善していた。また、平均SBPは、FDC群が129.2mmHg、通常群が131.7mmHgで、FDC群が有意に低かった(群間差:-2.6、95%CI:-4.0〜-1.1、P=0.0005)。また、LDL-C値は、FDC群が2.18mmol/L、通常群が2.29mmol/Lで、FDC群が有意に低かった(群間差:-0.11、95%CI:-0.17〜-0.05、P=0.00045)。

 これらの結果から演者らは、CVD既往またはCVDリスクの高い患者を対象に行った試験によって、FDCという方法で予防適応薬を投与することがアドヒアランス、SBPおよびLDL-Cの改善をもたらした、と結論付けた。

(日経メディカル別冊編集)