大阪大学機能診断科学講座の足立哲哉氏

 拡張障害型心不全(DHF)に対する治療法は、いまだに確立されていない。今回、DHFモデルラットにおいて、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)ロサルタンと利尿薬ヒドロクロロチアジド(HCTZ)の併用が、DHFにおける左室肥大心筋の線維化を抑制することが示された。大阪大学機能診断科学講座の足立哲哉氏らが、11月7日まで米国ロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で発表した。

 Dahl食塩感受性ラットに5〜7週齢から食塩濃度8%の食餌を与えると、DHFの徴候を呈することが報告されている。本検討では、同ラットを用い5週齢から食塩濃度8%の食餌を与えた。8週齢の時点からは、そのまま高食塩の食餌のみを与える群(HS群、11匹)、ロサルタン30mg/kg/日を追加する群(ARB群、6匹)、ロサルタン30mg/kg/日とHCTZ 30mg/kg/日を追加する群(ARB+HTCZ群、6匹)の3群に無作為に割り付け、17週齢まで継続した。

 その結果、HS群は心拍数、収縮期血圧ともに8週、17週と有意に上昇し続けた。それに対し、ARB群とARB+HTCZ群では心拍数の有意な上昇は認められなかった。また、ARB群では薬剤投与開始後、収縮期血圧が有意に高まり、僧帽弁輪運動速波形の拡張早期波(e’)は有意に減少していた。一方、ARB+HCTZ群は薬剤投与開始後、収縮期血圧が上昇しておらず、e’も減少していなかった。

 左室重量/体重比(LV mass/BW)に関しては8週後以降、ARB群では変化していなかったが、ARB+HCTZ群では有意に減少していた。

 HS群は17週齢の時点で、左室内径短縮率%(%FS)が維持されていたにもかかわらず、M-mode心エコーで中隔や後壁の肥厚が進展していることや、マッソントリクローム染色により心筋の繊維化が進行していることが示された。

 心筋線維化面積については、ARB+HCTZ群とARB群はHS群より有意に小さく、ARB+HCTZ群はARB群と比べても有意に小さかった。

 こうした結果を踏まえ足立氏は、「ARBとHCTZの併用療法は左室重量と心筋繊維化を抑制しており、DHFに有用であるかもしれない」とまとめた。さらに、「ARBのデメリットとしてNaの再吸収を促すことが知られているが、利尿薬はそれを排除できる。一方、利尿薬はレニン・アンジオテンシン系を活性化させるが、ARBはそれを排除できる。今回示された左室肥大や心筋線維化の抑制は、単なる降圧によるものではなく、ARBと利尿薬が互いのデメリットを打ち消しあって、ARBの心保護効果が十分に発揮された結果ではないか。今後は対照にARBと他の降圧薬を加えるなどして、降圧度をそろえて検討したい」と語った。

(日経メディカル別冊編集)