米Duke University Medical CenterのL Kristin Newby氏

 非ST部分上昇型急性心筋梗塞NSTEMI)に対し、p38MAPキナーゼMAPK)阻害剤のLosmapimodを12週間投与した結果、プラセボ群と比べ、イベント率に有意差は見られなかったが、左室拡張末期容積(LVEDV)、左室収縮末期容積(LVESV)が有意に改善したことが報告された。また、重篤な肝障害は確認されなかった。フェーズ2の臨床試験「SOLSTICE」の結果について、米Duke University Medical CenterのL Kristin Newby氏らが、11月3日から7日までロサンゼルスで開催された第85回米国心臓協会・学術集会AHA2012)で発表した。

 p38 MAPKは、炎症性サイトカインの⽣合成、アポトーシス誘導、細胞周期の調整などに関与するとされる。Losmapimodは、p38 MAPKを阻害することで炎症反応などを抑制することが期待されている。

 今回Newby氏らは、NSTEMI患者へのLosmapimodの安全性と有効性を検討する第II相試験を行った。試験は9カ国(米国、カナダ、オーストラリア、ドイツ、オランダ、スペイン、ポーランド、英国、インド)の84施設で実施された。

 対象は、45歳以上のNSTEMI患者535人。Losmapimod7.5mg1日2回投与群(7.5mgBID群、199人)、Losmapimod15mgで投与開始+7.5mg1日2回投与群(15mg+7.5mgBID群、192人)、プラセボ群(135人)の3群に3:3:2に割り付け、12週間投与した。投与2、4、8、12週間後に通院にて投与し、14週目は通院、6カ月目は電話にて確認した。

 安全性主要評価項目は、有害事象、重篤な有害事象、肝機能検査、臨床転帰(死亡、心筋梗塞、脳卒中、緊急血行再建術を要する虚血再発、心不全)だった。有効性の主要評価項目は、12週間後の高感度CRP、72時間のトロポニンIのAUC。副次評価項目は高感度CRP、IL-6、72時間のトロポニンIのピーク、BNP値とした。

 各群の患者背景は、年齢が62〜64歳、女性が26〜30%、糖尿病患者は27〜34%、高血圧は71〜73%、心筋梗塞既往者は17〜24%。スタチン使用者は90〜93%、PCIは58〜60%、冠動脈バイパス術が9〜16%だった。

 早期試験中断例はプラセボ群で32%、Losmapimod群が39%。そのうち、有害事象による中断例はプラセボ群が4%、Losmapimod群が9%だった。

 全有害事象の発現率は、7.5mgBID群が69%、15mg+7.5mgBID群は68%、プラセボ群が71%。このうち、治療関連有害事象はそれぞれ16%、12%、10%だった。重篤な有害事象は、7.5mgBID群が26%、15mg+7.5mgBID群は22%、プラセボ群が24%。ALT値が3xULN以上はそれぞれ2.5%、1.6%、0.7%。

 炎症性マーカーの高感度CRP値の変化を見ると、投与開始72時間ではLosmapimod群とプラセボ群との間に有意差が見られたが、12週間後では両群間に有意差はなかった。また、IL-6値についても同様の傾向で、Losmapimod群の投与24時間のIL-6値は、プラセボ群と比べて有意に低下したが、12週間後には有意差は見られなかった。

 次に、梗塞サイズを反映するマーカーとしてトロポニンI値を測定した結果、トロポニンIのAUC、ピーク値は両群間に有意差はなかった。

 死亡、心筋梗塞、脳卒中イベントの発生率は、プラセボ群が15%、Losmapimod群が12.9%で有意差はなかった(ハザード比:0.85、95%信頼区間[CI]:0.50-1.45)。さらに、虚血の再発、心不全イベントを追加したイベント発生率では、プラセボ群が18.2%、Losmapimod群が16.4%で有意差はなかった(ハザード比:0.88、95%CI:0.54-1.42)。

 さらに、予備データとしてBNPの経時変化を見たところ、投与72時間後では両群間に有意差はなかったが、投与12週間後にはプラセボ群が49.4pg/mLだったのに対し、Losmapimod群が37.2pg/mLで、有意に低下した(P=0.04)。

 MRIを撮影し、投与3〜5日後と12週間後の梗塞サイズ、左室駆出率(LVEF)、LVEDV、LVESVを調べた結果では、LVEDVとLVESVにおいてのみLosmapimod群で有意な改善が見られた。投与3〜5日後と投与12週間後のLVEDVは、ともにプラセボ群と比べて14%減少した(それぞれP=0.039、P=0.021)。Losmapimod群のLVESVは、プラセボ群と比べ、投与3〜5日後に22%(P=0.023)、投与12週間後に24%減少した(P=0.01)。

 これらの結果からNewby氏は、「NSTEMI患者へのLosmapimod投与は、重篤な肝障害などが見られず忍容性が高かったほか、高感度CRPとIL-6に対し作用することが示された。しかし、梗塞サイズは減少せず、投与12週間後のBNPやLVの減少、LVEFの上昇が見られたことから、同剤は心臓リモデリングに影響している可能性が示唆される」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)