英国のThrombosis Research InstituteのAjay Kakkar氏

 新規に診断され、脳卒中リスク因子を1つ以上持つ非弁膜症性心房細動患者のうち、ビタミンK拮抗薬で治療する患者のおよそ6割は、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)が適切にコントロールされていない実態が報告された。また、PT-INRコントロールが不良な群ではPT-INRコントロールが良好な群と比べ、診断から1年目の脳卒中イベント率、重大な出血イベント、死亡率が高かった。観察研究「GARFIELD Registry」の第1コホートの結果について、英国のThrombosis Research InstituteのAjay Kakkar氏らが、11月3日から7日までロサンゼルスで開催された第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で発表した。

 GARFIELD Registryは、新規に診断された非弁膜症性心房細動のうち、1つ以上の脳卒中リスク因子を保有する患者を対象に最低2年間追跡する観察研究。35カ国以上、無作為選出した1000以上の施設から5万5000人の患者を登録予定で、5つの連続したコホートから構成されている。日常臨床における抗凝固療法の治療実態や予後について検討し、抗凝固療法のベネフィットとリスクを明らかにすることが目的だ。

 今回報告した第1コホートは、2009年12月から2011年10月までに19カ国543施設から登録した1万537人が対象。このうち、9971人(95%)の患者の追跡データが使用可能だった。平均追跡期間は11.9カ月。

 患者背景をみると、平均年齢が70歳、女性が43.1%、BMIが27.5kg/m2、75歳以上が38.3%だった。病歴は、高血圧が77.8%、うっ血心不全が19.1%、脳卒中/TIAが14.4%、糖尿病が22.2%。平均CHADS2スコアは1.9、平均CHA2DS2-VAScスコアが3.2。このうちCHA2DS2-VAScスコアの患者分布では、3が最も多く23.0%、4が20.6%、2が19.7%と続いた。

 治療環境を見ると、循環器科が59%、内科医が21%、プライマリ・ケア医が18%、神経内科医が2%だった。

 抗凝固療法の内訳は、ビタミンK拮抗薬が57.4%、新規抗凝固薬が0.2%、そのほかのガイドラインでは推奨されていない抗凝固薬が9.0%、抗血小板薬が38.2%、抗凝固療法未実施が6.5%だった。

 ビタミンK拮抗薬による治療を行う患者のうち、PT-INRが適切にコントロールされていた(TTR:測定値が目標範囲に入っている時間が60%以上)のは43%で、残りの57%はINRコントロールが不良だった(同60%未満)。

 診断から1年目におけるイベント率は、脳卒中が1.3%、重大な出血が0.6%、死亡が2.2%だった。このうち、ビタミンK拮抗薬で治療していない患者(4247人、非VKA群)の脳卒中イベント率と死亡率は、ビタミンK拮抗薬で治療中の患者(5724人、VKA群)と比べて高かった。脳卒中イベント率はVKA群で1.1%、非VKA群で1.5%、死亡率はそれぞれ1.7%、2.9%だった。一方、重大な出血イベント率はVKA群が0.8%となり、非VKA群の0.4%よりも高かった。

 さらに、ビタミンK拮抗薬による治療を受けている患者を対象に、PT-INRコントロールと診断1年間のイベント率の関係を調べた結果、PT-INRコントロールが良好な群(TTRが60%以上、2009人)と比べ、PT-INRコントロールが不良な群(TTRが60%未満、2657人)の各イベント率が高いことが分かった。脳卒中/SEのイベント率は、PT-INRコントロール良好群が0.9%だったのに対し、PT-INRコントロール不良群が1.3%、重大な出血イベント率はそれぞれ0.5%、1.0%、死亡イベント率は0.9%、1.7%だった。

 次に、脳卒中リスク因子(心不全、左室駆出率40%未満、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中/一過性脳虚血発作/全身性塞栓既往、血管疾患、65〜74歳、女性)の個数別に、診断から1年間のイベント率を見ると、リスク因子の増加に伴い、脳卒中/SEと死亡イベント率は上昇した。たとえば脳卒中/SEのイベント率は、リスク因子が1つまたは2つの場合0.9%、3つまたは4つで1.5%、5つ以上では2.2%だった。また死亡イベント率は、リスク因子1つが1.1%、2つが1.8%、3つが2.1%、4つが2.8%で、5つ以上では5.4%だった。

 これらの結果からKakkar氏は、「日常診療の観察研究によって、心房細動患者では診断初期の死亡率が高く、脳卒中リスク因子の増加に伴い、脳卒中イベントや死亡率は上昇した。また、多くの患者ではビタミンK拮抗薬治療のPT-INRコントロールが不良で、予後不良につながっていると考えられた」と語った。

(日経メディカル別冊編集)