米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJohn R Teerlink氏

 ヒトレラキシン2の遺伝子組み換え型蛋白質「Serelaxin」を、急性心不全で入院した患者に投与することで、5日後の呼吸困難症状は有意に改善することが分かった。180日心血管死亡率もまた、4割近く低減することが示唆された。これは、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJohn R Teerlink氏らが、急性心不全で入院した患者、約1200人について行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験「RELAX-AHF」の結果明らかにしたもの。成果は、11月3日から7日までロサンゼルスで開催された第85回米国心臓病学会・学術集会(AHA2012)で発表された。

 RELAX-AHF試験では、11カ国96カ所の医療機関を通じて、急性心不全で入院した患者1161人を対象とした。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはSerelaxin(30μg/kg/日)を診察から16時間以内に48時間静脈投与し(581人)、もう一方にはプラセボを投与した(580人)。

 被験者は全て、呼吸困難、胸部X線像でうっ血が認められ、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)またはN末端プロBNPの増加があり、収縮期血圧は125mmHg超だった。

 主要評価項目は呼吸困難の改善で、5日後までの視覚的評価スケール曲線下面積(VAS AUC)と、24時間後までのリッカート尺度により測定した中程度から顕著な呼吸困難の改善だった。

 その結果、Serelaxin群の5日後までの呼吸困難症状は、プラセボ群に比べ、有意に改善した(VAS AUC格差:448mm×h、95%信頼区間[CI]:120-775、P=0.007)。一方、24時間までの同症状は両群で有意差はなく、リッカート尺度で改善が見られた人の割合は、プラセボ群が26%(150人)に対し、Serelaxin群は27%(156人)だった(P=0.70)。

 さらに、副次的評価項目とした心血管死または心不全や腎不全による入院の統合イベント発生率は、プラセボ群が13.0%に対しSerelaxin群が13.2%と、両群で同等だった(ハザード比:1.02、95%CI:0.74-1.41、P=0.89)。退院後60日までの平均生存日数もまた、プラセボ群が47.7日に対しSerelaxin群が48.3日と、両群で同等だった(P=0.37)。

 一方で、180日までの心血管死亡率は、プラセボ群が9.5%(55人)に対し、Serelaxin群は6.0%(35人)と、4割近い減少が見られた(ハザード比:0.63、95%CI:0.41-0.96、P=0.028、治療必要数:29)。

 ディスカッサントで英国Glasgow大学のJohn McMurray氏は、同試験結果を受けて、「Serelaxinは呼吸困難症状を改善するだろうと考えられる」としながら、臨床医としては、「VAS AUC格差が448mm×hとはどういう意味があるのか、という疑問が残る」とした。

 また同試験の限界として、「もう一つの主要評価項目や副次的評価項目、中でも心不全などによる再入院リスクに減少が見られなかった点が気になる」とした。さらに、同試験の被験者数が比較的少ないため、その結果も統計的な頑健性に欠けることを指摘し、「同様な結果が、より大規模な試験で再現されることを期待している」と結んだ。

(日経メディカル別冊編集)