横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センターの岡田興造氏

 冠動脈疾患(CAD)患者に対する脂質低下療法において、スタチンエゼチミブの併用投与は高用量のスタチン投与に比べ、肝細胞内のLDL受容体を分解し血中LDLコレステロール(LDL-C)を増やすとされるPCSK9を増加させにくいことが分かった。また、PCSK9が同レベルであっても併用投与の方がLDL-Cは低かったことも示された。横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センターの岡田興造氏らが、11月7日まで米国ロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会AHA2012)で発表した。

 対象は、日本における標準的な投与量のスタチン(アトルバスタチン10mg/日あるいはロスバスタチン2.5mg/日)による治療を受け、LDL-C管理目標値の70mg/dL未満を達成できていないCAD患者200例。これらの患者を、エゼチミブ10mg/日を追加投与する群(エゼチミブ併用群)と既存のスタチンを倍量(アトルバスタチン20mg/日あるいはロスバスタチン5mg/日)に増やす群(スタチン倍量群)のいずれかに無作為に割り付け、52週間追跡した。

 脱落などにより、最終的な解析対象はエゼチミブ併用群78例、スタチン倍量群72例だった。患者背景に関しては、年齢、性、BMI、CADの家族歴、喫煙、合併症、併用薬、各種脂質値などのいずれの項目でも、両群間に差は認められなかった。

 LDL-Cの推移を見ると、エゼチミブ併用群ではベースライン時は111.9mg/dL、12週後は83.2mg/dL、52週後は83.1mg/dLと、12週後、52週後はともにベースライン時より有意に低かった(ともにP<0.05)。スタチン倍量群は順に109.3 mg/dL、92.3 mg/dL、96.8 mg/dLと、エゼチミブ併用群と同様に12週後、52週後はともにベースライン時より有意に低かった(ともにP<0.05)。しかし、スタチン倍量群のみ、52週後は12週後に対し有意に高くなっていた(P<0.05)。また、12週後、52週後のいずれにおいても、エゼチミブ併用群の方がスタチン倍量群より有意に低かった(いずれもP<0.05)。

 コレステロール合成マーカー(ラソステロール/総コレステロール比)に関しては、エゼチミブ併用群はベースライン時0.61μg/mg、12週後1.05μg/mg、52週後1.12μg/mgと、増加したままであった。一方、スタチン倍量群は0.62μg/mg、0.54μg/mg、0.66μg/mgと大きくは増えていなかった。それに対し、コレステロール吸収マーカー(カンペステロール/総コレステロール比)に関しては、エゼチミブ併用群は2.61μg/mg、1.36μg/mg、1.67μg/mgと減少したままであり、スタチン倍量群は2.68μg/mg、2.93μg/mg、3.62μg/mgと増加していた。

 血漿PCSK9の推移については、エゼチミブ併用群の場合、ベースライン時は323ng/mL、12週後は310ng/mLとやや減少したものの、52週後は336ng/mLと12週後に対し有意に上昇した(P<0.05)。スタチン倍量群の場合、順に326ng/mL、366ng/mL、333ng/mLであり、12週後はベースライン時よりも有意に上昇したが(P<0.05)、52週後は12週後よりも有意に低下した(P<0.05)。すなわち、エゼチミブ併用群は凹型の変化であったのに対し、スタチン倍量群は凸型の変化で、12週後においては両群間に有意差が認められた。

 また、血漿PCSK9の変化量とLDL-Cの変化量を患者ごとにプロットし相関を検討したところ、両群とも有意な負の相関が認められた。LDL-Cが減るとPCSK9が増えるという関係であり、スタチン倍量群の方がその傾きが大きかった。

 今回の検討では、LDL-Cの推移は両群間で大きく異なっていなかったにもかかわらず、PCSK9の変化は12週までの急性期と12週から52週までの慢性期において、両群でまったく異なっていた。ここで注目すべきなのは、急性期においては、エゼチミブ併用群ではLDL-Cが大きく減少したのにもかかわらず、PCSK9は変化しなかった点と、慢性期においては、エゼチミブ併用群はPCSK9が増加したにもかかわらず、LDL-Cは増加しなかった点だ。

 これに関して岡田氏は、「コレステロールの合成・吸収とPCSK9がどのように関連しているかは明らかでないので、機序について断定的なことはまだ言えないだろう。ただ、コレステロールの合成阻害に加え、小腸からのコレステロールの吸収阻害という異なる作用を併用する方が、LDL-Cをより良好にコントロールできると考えられるのではないか」と語った。

(日経メディカル別冊編集)