山梨大学循環器・呼吸器内科の橘田吉信氏

 血管内皮機能検査の1つであるFMDflow mediated dilation)検査は、スタチン投与によりLDLコレステロール(LDL-C)目標値を達成した冠動脈疾患CAD)患者の心血管(CV)残存リスクの評価に有用な可能性が示された。11月7日までロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会AHA2012)で、山梨大学循環器・呼吸器内科の橘田吉信氏らが発表した。

 CAD患者において脂質低下療法でLDL-C目標値を達成しても、CVイベントリスクが残存することは知られている。また、血管内皮機能障害はCVイベントの強力な予測因子だが、スタチン投与後の内皮機能がCVイベントの予測因子になり得るかどうかは明らかになっていない。そこで、スタチン投与によってLDL-C 100mg/dL未満を達成しているCAD患者248例を対象に検討した。

 対象患者の年齢は64±11歳、男性が75%を占め、急性冠症候群(ACS)既往例が58%、複数疾患を有する患者が62%、高血圧合併例が76%、糖尿病合併例が46%だった。脂質データについては、LDL-Cが82±15mg/dL、トリグリセリドが140±58mg/dL、HDLコレステロールが47±14mg/dLだった。

 上腕動脈においてFMD検査を行い、対象患者の50パーセンタイルである5.5%を境界値として、FMD維持群(148例)、FMD障害群(100例)の2群に分けた。CVイベント(心臓死、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、脳卒中)発生まで、あるいは36カ月間追跡した。

 平均追跡期間 33 カ月間において、FMD障害群では18 例(18%)でCVイベントが発生し、その内訳は、心臓死1例、非致死性心筋梗塞5例、不安定狭心症10例、脳卒中2例だった。一方、FMD維持群では11例(7%)のCVイベントが発生し、その内訳は非致死性心筋梗塞2例、不安定狭心症8例、脳卒中1例だった。

 多変量ロジスティック解析を行ったところ、FMD 5.5%未満はCVイベント発生の有意な予測因子であった(オッズ比:2.8、95%信頼区間:1.2-6.9、P<0.01)。また、C統計量解析の結果、CVイベント予測能は従来リスク(年齢、高血圧、糖尿病、喫煙)単独よりも、従来リスクにFMD障害を加えた方が有意に高かった(P<0.05)。

 これらの結果から橘田氏は、「FMD測定はスタチン治療でLDL-C目標値を達成したCAD患者のCVイベントの残存リスク評価に有用である」と結論した。さらに、FMD障害例に対しては、スタチンの増量、フィブラート系薬剤やエゼチミブの併用といった治療を考慮してもよいのではないかとの見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)