東邦大学医療センター大橋病院の中村正人氏

 重症虚血肢(CLI)のファーストライン治療である血管内治療EVT)は、施行後12カ月での下肢大切断の回避かつ非切断生存率(AFS)や大切断もしくはバイパス術の施行回避率が高いことが示された。Olive Registryの研究グループを代表して東邦大学医療センター大橋病院の中村正人氏が、11月3日から7日までロサンゼルスで開催された第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で発表した。

 バイパス術はCLI患者に対する下肢温存標準治療法だが、最近では技術の進歩により、EVTがCLIのファーストライン治療となっている。しかし、CLI患者においてEVTの有効性と安全性を評価したデータは不足している。そこで中村氏らは今回、日本人の末梢動脈疾患によるCLI患者において、EVTによる治療の実質的な成果を評価するため、日本の19施設による多施設共同前向き試験を行った。

 対象は、CLIと診断され、EVTによる血行再建術の適応である20歳以上で、1年以上観察が可能と判断される例とした。大切断の既往がある例、余命1年未満と予測される例、広範な虚血性潰瘍/壊疽がありEVT後大切断が必要と判断される可能性のある例、腸骨動脈疾患が併存する例などは除外し、312例(平均年齢73.1歳、男性65%)でデータ分析を行った。そのうち、大切断を行ったのが23例、死亡54例、追跡不能となった例が22例あり、大切断を回避し生存した例は213例だった。EVT手技の成否に関わらず、手技後1、3、6、12カ月後に追跡調査を行った。

 患者背景は、平均BMIが22.1kg/m2(うちBMIが18.5kg/m2未満13%)、血漿アルブミン濃度は3.7g/dL(うち3.0g/dL未満7%)だった。リスク因子としては、糖尿病罹患例が223例(うちインスリン療法加療中111例)、HbA1c値は平均6.2%、HbA1c値が8.4%以上の例は23例、血液透析は163例が受けていた。Rutherford分類では、4度が12%、5度が73%、6度が15%だった。虚血指標である足関節上腕血圧比(ABI)は、平均0.7(うちABI 0.9以上が19%、0.4未満が6%)、レーザードプラー皮膚灌流圧(SPP)は背面が平均26mmHg、足底面が平均30mmHgだった。

 主要評価項目は、EVT施行後12カ月でのAFSとした。下肢大切断は、足関節より中枢側での下肢切断と定義した。Cox比例ハザード回帰分析の結果、全体でのAFSは74%だった。リスク因子ごとに見ると、BMI 18.5未満の場合のハザード比2.22(95%信頼区間[CI]:1.23-4.01、P=0.008)と有意にリスクが高まった。同様に、スタチン投与のハザード比は0.59(95%CI:0.30-1.13、P=0.11)、貧血1.80(95%CI:0.97-3.32、P=0.06)、心不全1.73(95%CI:1.02-2.91、P=0.04)、創傷感染1.89(95%CI:1.07-3.32、P=0.02)となり、BMI 18.5未満に加え心不全と創傷感染も独立した有意なリスク因子だった。上記のリスク因子を1つも有さないLowグループのAFSは85%、リスク因子を1つ有するModerateグループは65%、2〜3つ有するHighグループは48%と、リスク因子が増えると確実にAFSが悪化した。

 副次評価項目は、早期アウトカムとして、初期治療成功率、初期治療合併症率とした。長期アウトカムとしては、主要有害下肢イベント(MALE)、治癒までの期間、QOLパラメーターの変化(EQ-5D)、などとした。初期治療成功率は93%だった。QOLパラメーターは、経過時間に伴って有意に改善した(P<0.001)。12カ月後までに、34%に再介入を行った。内訳としては、バイパス術2.6%、EVT再施行31.7%だった。

 MALE回避率は、全体で88%だった。血液透析をしている患者の場合、ハザード比が1.98(95%CI:1.23-3.21、P=0.005)と有意にリスクが高まった。同様に、心不全では1.69(95%CI:1.08-2.66、P=0.02)、Rutherford分類6度では2.25(95%CI:1.36-3.74、P=0.002)、one straight line too footでは0.55(95%CI:0.23-1.28、P=0.16)だった。上記のリスク因子を1つも有さないLowグループのMALEは96%、リスク因子を1つ有するModerateグループは88%、2〜3つ有するHighグループは78%と、リスク因子が増えるとMALE回避率も悪化した。

 治癒までの期間の中央値は97日だった。12カ月での潰瘍治癒率は、全体で87%だった。BMI 18.5未満の場合、ハザード比0.54(95%CI:0.31-0.96、P=0.03)と有意にリスクが高まった。血液透析0.79(95%CI:0.58-1.09、P=0.15)、創傷感染0.60(95%CI:0.36-0.98、P=0.04)だった。上記のリスク因子を1つも有さないLowグループの治癒率は93%、リスク因子を1つ有するModerateグループは86%、2〜3つ有するHighグループは69%だった。

 これらの結果から中村氏は、「再介入率は高かったものの、EVTはAFSやMALE回避率が良好であり、日本人のCLI患者に対する有効な治療法であることが示された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)