米Wayne state大学のTushar Tuliani氏

 血中ビタミンD濃度が20ng/mL以下とビタミンD欠乏状態で、ベースライン時に心電図異常が存在する場合は、全死因死亡および心血管死亡のリスクが上昇することが示された。米Wayne state大学のTushar Tuliani氏らが、11月3日から7日までロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会AHA2012)で発表した。

 ベースライン時の心電図を心血管疾患のスクリーニングとして使用したエビデンスは不足している。フラミンガムリスクスコアに心電図異常を追加したところ、NHANES IIIコホート研究においては3.6%、高齢者コホート研究においては7.4%のリスク再分類が行われた。また、ビタミンD欠乏症は、心血管疾患の予測因子の1つだ。しかし、ビタミンD値と心電図異常有病率との関係については、評価されていない。そこで今回Tuliani氏らは、主要な心電図(mECG)異常と血清25-OH-D値との関係を検討した。

 対象は、NHANES IIIコホート研究において使用可能な心電図解析データがある8561例から、ECGデータが欠落した20例、ビタミンD値が欠落した285例、共変数が欠落した1328例、心拍数が100以上の68例を除外し、6860例とした。対象を、ビタミンD濃度40ng/mL超の充足群、ビタミンD濃度20ng/mL超40ng/mL以下の不足群、ビタミンD濃度20ng/mL以下の欠乏群の3群に割り付けた。

 欠乏群において有意に少なかったのは、リン(P<0.001)、イオン化カルシウム(P<0.001)、カリウム(P=0.04)だった。一方、eGFR値(P=0.002)、C反応性蛋白(P=0.004)は欠乏群において有意に高かった。

 主なECG異常(QS波、ST低下、陰性T波、完全房室ブロック、ウォルフパーキンソンホワイト型、人工ペースメーカー、心室内伝導障害、心房細動または心房粗動、ST上昇)発生率は、欠乏群で15.1%、不足群で14.18%、充足群で8.34%と、充足群で有意に少なかった(P=0.007)。

 共変数別に3つのモデルを作成し、ロジスティックス回帰分析を行ってオッズ比を算出した。モデル1の共変数は年齢、性別、人種。モデル2の共変数は従来の心血管リスク因子で、喫煙、糖尿病、収縮期血圧、50歳未満での早期心筋梗塞の家族歴、HDLコレステロール率。モデル3の共変数は、eGFR、BMI、血中リン濃度、C反応性蛋白、左室肥大とした。

 モデル1において、充足群と比較した不足群のハザード比は1.78(95%信頼区間[CI]:1.14-2.73、P=0.011)、欠乏群のハザード比は2.18(95%CI:1.4‐3.41、P=0.001)だった。同様に、モデル2では、充足群と比較した不足群のハザード比は1.74(95%CI:1.1‐2.75、P=0.02)、欠乏群のハザード比は1.91(95%CI:1.18‐3.09、P=0.001)と、ビタミンD値が低下するほど有意なリスク上昇を示した。モデル3では、充足群と比較した不足群のハザード比は1.79(95%CI:1.03‐3.1、P=0.03)、欠乏群のハザード比は1.96(95%CI:1.09‐3.52、P=0.02)と、いずれもビタミンD濃度が低下するほど有意なリスク上昇を示した。

 心電図との関連を検討したところ、ベースライン時に心電図に異常があり、ビタミンD濃度が20ng/mL未満の場合、全死因死亡および心血管死亡のリスクが高まった。Cox回帰分析の結果、全死因死亡率のハザード比は共変数(対数変換年齢、性別、人種、50歳未満での心筋梗塞家族歴、糖尿病、対数変換収縮期血圧、対数変換HDLコレステロール率、現在喫煙、C反応性蛋白)によって調整しても1.68(95%CI:1.33‐2.12、P<0.01)、心血管死亡率は2.07(95%CI:1.51‐2.83、P<0.01)と上昇した。

 これらの結果からTuliani氏は、「ビタミンDが欠乏しており、ベースライン時に心電図異常が存在する場合は、有害な心血管の転帰を予測できる」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)