米国Merck社Director in Molecular BiomarkersのThomas P. Roddy氏

 コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬であるanacetrapibの第III相試験であるREVEALが現在行われている。そこで、LDLコレステロール(LDL-C)の低下のみならず、HDLコレステロール(HDL-C)の著明な増加も期待されている同薬の作用機序やトリグリセリド(TG)の転送メカニズムなどについて、アカゲザルで検討した結果を中心に、米Merck社Director in Molecular BiomarkersのThomas P. Roddy氏らが、11月7日までロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で報告した。

 CETPはHDL中のコレステロールエステルをVLDLやLDLに転送したり、HDLとTGの交換を促進したりすることが、明らかにされている。これを踏まえて、CETP阻害がHDLへのTG転送LDLへのコレステロール転送を抑制し、HDL-C増加やLDL-C減少をもたらすことが期待できるのではないかと考えられ、CETP阻害薬の開発が進められている。

 今回Roddy氏は、雄性アカゲザル6匹にanacetrapib(150mg/kg)を10日間投与し、各脂質値の変化を検討した結果を紹介した。10日間の投与により、血漿VLDLコレステロール(VLDL-C)は74%、血漿LDL-Cは65%それぞれ有意に減少し(P=0.0203、P<0.0001)、血漿HDL-Cは153%有意に増加した(P=0.0001)。血漿HDL中のTGについては予想通り75%有意に減少したものの(P=0.0019)、血漿VLDL中のTGと血漿LDL中のTGは予想に反して、それぞれ30%、42%減少した(P=0.1808、P=0.1107)。したがって、総血漿TGは49%有意に減少していた(P=0.0086)。

 そこで、TGの転送メカニズムの解明を試みた。アカゲザルにプラセボまたはanacetrapibを投与し、その1時間後にアイソトープ(13C)で標識したオレイン酸(オレイン酸13C)を静脈注射。2時間後までは20分ごと、その後24時間後までは1時間ごと、覚醒下に血液を採取し、さらに72時間後、120時間後は鎮静下に血液を採取した。なお、標識したオレイン酸は肝臓でTGに取り込まれて13C-TGとなり、そのTGはVLDLに蓄積されると考えられる。さらに、VLDL中のTGが下流のリポ蛋白に転送されたり、VLDLがLDLに変異したり、リパーゼによりVLDLが代謝されることも予想された。

 その結果、VLDL中の標識されたTGは、プラセボ投与群、anacetrapib投与群のいずれでも試験開始直後からほぼ同様に上昇し、両群ともに約1時間で5%前後に達した。それをピークに下降し始めたが、anacetrapib投与群はより早く定常状態に戻った。一方、LDL中とHDL中の標識されたTGは、プラセボ投与群では試験開始後から上昇し、約2時間後をピークに下降し始めたのに対し、anacetrapib投与群ではほとんど上昇せず、ほぼフラットに推移した。これらの結果から、同薬の投与によりLDLおよびHDLへのTGの転送が低下することと、VLDL中TGのLDL中TGへの変異が低下することが推測された。

 このほかにも、生化学分析による血漿TGの検討で、血漿TGとVLDL中TGのいずれのクリアランスをanacetrapibが早めることがすでに確認されている。その一方、同薬はTGを脂肪酸(FFA)やグリセロールに分解するリパーゼ活性には影響を与えないことが報告されている。

 さらに、anacetrapib投与により血漿PCSK9がより低下することも分かっている。PCSK9はLDL受容体の分解を促進すると考えられているため、CETP阻害よりPCSK9が減少すれば、VLDLやLDLのクリアランスの促進も期待される。

 一連の結果を踏まえRoddy氏は、「今後、CETP阻害がPCSK9の低下につながる機序の解明が必要と考えられる。また、リポ蛋白の合成、成熟、クリアランスの機序を理解するためには、リパーゼ活性の影響や蛋白動態に関する新たな検討も必要ではないか」と語った。

(日経メディカル別冊編集)