米Colorado大学のGregory G. Schwartz氏

 急性冠症候群を発症した人に対し、CETP阻害薬ダルセトラピブを投与し、HDL-C値を上げても、心血管イベントの再発リスク減少効果を確認できなかったことが報告された。これは、米Colorado大学のGregory G. Schwartz氏らが1万6000人弱について行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験「del-OUTCOME」によって明らかにしたもの。成果は、11月3日から7日までロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓病学会・学術集会(AHA2012)で発表された。

 HDL-C値が高いほど、心血管疾患リスクが低い傾向があることはこれまでの観察研究で明らかにされているが、薬物療法によりHDL-C値を上げることが、同発症リスクの減少につながるかどうかは不明だった。

 del-OUTCOME試験は、2008年4月〜2010年7月にかけて、27カ国、935カ所の医療機関が参加して行われた。対象は、45歳以上で、急性冠症候群で入院した患者1万5871人。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはダルセトラピブ600mg/日を(ダルセトラピブ群、7938人)、もう一方の群にはプラセボを投与した(プラセボ群、7933人)。被験者には合わせて、エビデンスに基づく最適治療を行った。

 主要評価項目は、冠動脈性心疾患死、非致死心筋梗塞、虚血性脳卒中、不安定狭心症、心停止後の蘇生、の統合イベント発生だった。

 ベースライン時の被験者の平均年齢は60歳、19%が女性、88%が白人だった。うち、高血圧症は68%、メタボリック症候群は63%、糖尿病は24%、喫煙者は21%だった。平均LDLコレステロール(LDL-C)値は76mg/dL(1.96mmol/L)、平均HDL-C値は42mg/dL(1.09mmol/L)、トリグリセリド値は134mg/dL(1.51mmol/L)だった。

 追跡期間の中央値は、31カ月だった。その間、平均HDL-C値は、プラセボ群で4〜11%、ダルセトラピブ群で31〜40%、それぞれ増加した。

 同試験は、その有益性が乏しいと判断し、主要評価イベントが1135人で発生した時点で早期に終了した。主要評価イベントの発生率は、プラセボ群が8.0%に対し、ダルセトラピブ群が8.3%と、両群で有意差はなかった(ハザード比:1.04、95%信頼区間:0.93-1.16、P=0.52)。

 主要評価項目を構成する個々のイベント発生率もまた、いずれも両群で同等だった。

 ダルセトラピブ投与で心血管疾患リスクの低下が認められなかった理由の可能性として、Schwartz氏は、ベースライン時のHDL-C値と主要評価イベント発生率に、関連がなかった点を挙げた。ベースライン時のHDL-C値を五分位範囲で分類し、年間同イベント発生率を比較したが、両者には関連はなかった。同氏は、被験者の97%がスタチンやアスピリン、88%がβ遮断薬を服用するなど、「心血管リスク低下のための多種治療薬を既に服用している場合には、高HDL-C値はもはや心血管リスク低下にはつながらない可能性もある」とした。

 もう一つの可能性としては、C反応性蛋白値の中央値と平均収縮期血圧値が、ダルセトラピブ群でプラセボ群に比べ、それぞれ0.2mg/Lと0.6mmHg、有意に高かった点を指摘した(いずれもP<0.001)。

(日経メディカル別冊編集)