米Emory大学のAndreas Kalogeropoulos氏

 1日当たりのナトリウム摂取量が多い高齢者は、10年間での死亡率が上昇したと報告された。一方で、ナトリウム摂取が少ない高齢者でにおいても死亡率が上昇していたことも分かった。また女性と黒人、利尿薬を使用している高血圧患者の場合は、リスクがさらに高まった。米Emory大学のAndreas Kalogeropoulos氏らが、11月7日までロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で発表した。

 ナトリウムの過剰摂取は、心血管疾患と心不全のリスク因子と関連するため、ナトリウムの摂取量を制限すれば、心血管疾患や心不全のリスクを低減できると報告されている。一方で、抜本的なナトリウム制限は、インスリン抵抗性、血清脂質および神経ホルモンの活性化など、心血管疾患と心不全に関連する各因子に悪影響を及ぼす可能性があることも報告されている。高齢者においては、薬物相互作用や摂取カロリー不足に加え、低ナトリウム血症も問題となっている。そのため、今回Kalogeropoulos氏らは、高齢者のナトリウム摂取量と死亡率の関連を検討した。

 対象は、1997年4月から1998年6月までに米ピッツバーグもしくはメンフィスにおいてHealth ABC研究に登録した70〜79歳までの高齢者3075人。食事データは、Health ABC研究用に設計された108項目の食事摂取頻度調査票(FFQ)を使用して、2年間調査し、2713人のデータを得た。ここから明らかな心不全のため63人を、1日当たり300mg未満とあまりにもナトリウム摂取量が少ないため8人を除外し、最終的に2642人のデータについて分析した。対象を、1日当たりのナトリウム摂取量ごとに、1500mg未満群(291人、74.4歳)、1500〜2300mg群(779人、74.6歳)、2300mg超群(1772人、74.6歳)と分け比較検討した。

 対象の背景をみると、男性の割合は1500mg未満群が30.2%で、1500〜2300mg群(40.4%)と2300mg超群(56.4%)よりも有意に低かった(P<0.001)。一方、黒人の割合は1500mg未満群が47.1%で、1500〜2300mg群(36.6%)と2300mg超群(37.5%)より有意に高かった(P=0.01)。高血圧は、1500mg未満群が57.4%で、1500〜2300mg群(54.8%)と2300mg超群(51.1%)より有意に多かった(P=0.02)。

 主要アウトカムは、10年間の全死因死亡率とした。その結果、1500mg未満群の死亡数は33.8%、1500〜2300mg群は30.7%、2300mg超群は35.2%で、各群間に有意差は認められなかった。死亡率が最も低いのは1500〜2300mg群だった。

 1500〜2300mg群を基準とし、年齢、性別、人種、喫煙、BMI、身体活動、心電図、収縮期血圧、心血管既往、糖尿病、高血圧、肺疾患、クレアチニン値、総コレステロール値で調整した10年死亡リスクを見てみると、1500mg未満群の全死亡率ハザード比は1.16(95%信頼区間[CI]:0.91-1.47)、2300mg超群もハザード比1.16(95%CI:1.00-1.36)と、それぞれでリスクが高まっていた。

 この傾向は女性で強まり、1500mg未満群の女性の死亡率ハザード比は1.20(95%CI:0.87-1.66)で、2300mg超群ではハザード比1.28(95%CI:1.01-1.63)と、1500〜2300mg群に比べ2300mg超群では女性の死亡率が有意に高かった(P=0.038)。また、1500mg未満群の黒人の死亡率ハザード比は1.47(95%CI:1.05-2.06、P=0.027)、2300mg超群のハザード比は1.31(95%CI:1.02-1.68、P=0.036)といずれも1500〜2300mg群に比べ有意に高かった。

 高血圧を合併しており、利尿薬を使用している対象に限って死亡率を見ると、1500mg未満群ではハザード比1.85(95%CI:1.17-2.91、P=0.008)、2300mg超群ではハザード比1.72(95%CI:1.23-2.40、P=0.001)と、いずれも1500〜2300mg群に比べ有意に高かった。

 これらの結果からKalogeropoulos氏は、「ナトリウムの過剰摂取は、高齢者の10年間での死亡率上昇と関連した。一方で、ナトリウム摂取が少なかった群でも死亡率が上昇した。女性と黒人ではリスクがさらに増加していた」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)