米国Weill Cornell Medical CollegeのPeter M. Okin氏

 心電図(ECG)で左室肥大を認めた高血圧患者の収縮期血圧(SBP)130mmHg以下に降圧すると、糖尿病の新規発症が38%有意に減少することが報告された。これはLIFE試験サブ解析結果によるもので、米Weill Cornell Medical CollegeのPeter M. Okin氏らが、11月3日からロサンゼルスで開催中の第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で発表した。

 LIFE試験の対象は、心電図検査により左室肥大と診断された高血圧患者9193人だった。今回のサブ解析では、ベースライン時にすでに糖尿病を合併していた1195例とHDLコレステロール(HDL-C)値が測定されていなかった513例を除外した7485例を対象とし、SBPと糖尿病の新規発症との関連を検討した。

 同試験は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬のロサルタン(50mg/日)投与群あるいはβ遮断薬のアテノロール(50mg/日)投与群に無作為に割り付け、降圧目標は140/90mmHg以下とした。降圧不十分の場合は利尿薬のヒドロクロロチアジド(12.5mg)を追加し、それでも達成できていない場合はロサルタン、アテノロールを100mg/日に増量することとされた。

 平均観察期間4.6±1.2年の間に、520例(6.9%)が糖尿病を新規に発症した。新規発症群と非発症群(6965例)で患者背景を比較すると、年齢、性、人種、心血管疾患(虚血性心疾患、心筋梗塞、心不全、脳卒中、末梢血管疾患)の既往、喫煙、尿中アルブミン/クレアチニン比に関しては有意な差はなかった。一方、BMIや血糖値、クレアチニン値は新規発症群が有意に高値であったが、総コレステロール値やHDLコレステロール値は新規発症群が有意に低かった(すべてP<0.001)。

 前治療における降圧療法の実施率は非発症群の70.4%に対し新規発症群は80.2%と、新規発症群で有意に高かった(P<0.001)。一方、ロサルタンの処方率は順に50.9%、42.3%と新規発症群で有意に低かった(P<0.001)。利尿薬の処方率については、ベースライン時は差がなかったが、1年後、2年後、3年後、4年後、5年後はいずれも新規発症群の方が有意に高かった。また、スタチンの処方率はベースライン時、1年後は差がなかったが、2年後以降は5年後まで新規発症群の方が有意に高率だった。

 ベースライン時のSBPは、非発症群173.8mmHgに対し、新規発症群177.1mmHgと、後者で有意に高かったが(P<0.001)、拡張期血圧には有意な差はなかった。ベースライン時からの降圧幅は、非発症群が29.2/16.8mmHg、新規発症群が31.5/19.1mmHgと、後者がいずれも有意に降圧幅が大きかった(順にP=0.010、P<0.001)。

 左室肥大の診断に際して用いたCornell voltage-duration product(Cornell product)はベースライン時において、非発症群が2805mm・ミリ秒、新規発症群が2980mm・ミリ秒と、後者が有意に大きかった(P<0.001)。一方、同じくSokolow-Lyon voltageはそれぞれ30.3mm、29.1mmと、後者が有意に小さかった(P=0.015)。なお、ベースライン時からの変化量を比較したところ、Cornell product、Sokolow-Lyon voltageのいずれにおいても、両群に差はなかった。

 試験終了時のSBPにより、130mmHg以下、131〜141mmHg、142mmHg以上の3群に分け、糖尿病の新規発症リスクをCox比例ハザードモデルで多変量解析を行った(無作為化割付時の治療群、年齢、性、人種、前治療の降圧療法、ベースライン時のBMI、尿酸値、血糖値、HDL-C値を共変量とし、治療中の拡張期血圧値、Cornell product、BMI、HDL-C値、ヒドロクロロチアジドとスタチンの使用を時間依存共変量として補正)。その結果、142mmHg以上群を対照群とすると、130mmHg以下群のハザード比は0.62(95%信頼区間:0.43-0.88、P=0.007)で、新規糖尿病の発症リスクを有意に下げることが示された。一方、131〜141mmHg群では、有意な発症リスクの低下が認められなかった。

 これらの結果からOkin氏は、「ECGによる左室肥大が認められる高血圧患者でSBPを 130mmHg以下に降圧すると、既知のリスク因子などとは独立して、糖尿病の新規発症リスクが38%有意に低下した」と結論した。また、次の検討課題として、こうした高リスクの高血圧患者における糖尿病発症予防に向けたSBPの降圧目標を明確にする点を挙げた。

(日経メディカル別冊編集)