神戸大学循環器内科学分野の森健太氏

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた冠動脈疾患(CAD)患者において、空腹時アポリポ蛋白(Apo)B48コレステロール吸収/合成マーカー比は病変進展の予測因子となり得るだけでなく、2次予防のための治療ターゲットにもなり得る可能性が示された。11月3日からロサンゼルスで開催中の第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で、神戸大学循環器内科学分野の森健太氏らが発表した。

 スタチンによるLDL-C低下療法を行ってもCADリスクは残存することが、近年の臨床試験から示されており、外因性リポ蛋白がそれに関与している可能性が指摘されている。また、ApoB48はカイロミクロンカイロミクロンレムナントといった小腸由来のリポ蛋白のみに存在し、空腹時における血漿ApoB48高値は外因性リポ蛋白の代謝遅延を反映することや、コレステロールの吸収亢進・合成低下が心血管疾患の独立したリスク因子であることが報告されている。そこで森氏らは、ApoB48やコレステロール吸収/合成マーカー比が、CAD進展予測やリスク層別化に有用か否かの検討を試みた。

 検討対象は、2008年7月から2012年3月までに神戸大学医学部附属病院に入院し、同意が得られた704例。これらの患者を、不整脈、心弁膜症、心筋症などCADでない患者267例(非CAD群)、PCIを初めて受けたCAD新規発症患者112例(新規CAD群)、6カ月以上前にPCIを受けている慢性CAD患者325例(慢性CAD群)に分けた。

 この3群においてApoB48(中央値)を見ると、非CAD群は3.5μg/mL(25%-75%区間:2.5-5.1)、新規CAD群は4.4μg/mL(同:3.0-6.4)、慢性CAD群では4.0μg/mL(同:2.9-5.8)と、新規CAD群と慢性CAD群はいずれも非CAD群に比べ有意に高値であった(順にP<0.005、P=0.032)。一方、各群のLDL-C(平均±SD)はそれぞれ111.2±29.4mg/dL、108.4±30.6mg/dL、92.1±28.8mg/dLだった。すなわち、慢性CAD群はスタチン投与によりLDL-C値100mg/dL未満であったにもかかわらず、ApoB48は非CAD群より高いことが分かった。

 PCI施行6〜8カ月後に冠動脈造影を実施し、慢性CAD群を、再狭窄が認められず標的病変再血行再建(TLR)が不要だった群(TLR[−]群、211例)、ステント内再狭窄が認められた群(ISR[+]群、40例)、ステント留置部位以外で新規病変が認められた群(De Novo群、74例)の3つに分けた。

 これら3群におけるLDL-C(平均±SD)はそれぞれ86.9±30.8mg/dL、87.01±21.9mg/dL、95.3±29.3mg/dLで、いずれも100mg/dL未満にコントロールされていた。しかし、ApoB48(中央値)は順に3.8μg/mL(25%-75%区間:2.6-5.5)、3.7μg/mL(同:3.0-4.8)、4.7μg/mL(同:3.8-6.9)であった。De Novo群はスタチン治療にもかかわらず、TLR(−)群やISR(+)群に比べApoB48が有意に高値であることが示された(それぞれP=0.005、P=0.032)。そこで、ロジスティック回帰分析による多変量解析を行ったところ、ApoB48高値の有意な規定因子は新規発症であることが分かった。

 次に、コレステロールの吸収と合成について検討した。コレステロール吸収マーカーとしてカンペステロール/総コレステロール(TC)比を用いて各群の値(平均±SD)を見たところ、TLR(−)群(118例)は3.23±1.24μg/mg、ISR(+)群(15例)は3.08±0.81μg/mg、De Novo群(24例)は3.91±1.67μg/mgと、De Novo群はTLR(−)群、ISR(+)群のいずれに対しても有意に高かった(いずれもP<0.05)。一方、コレステロール合成マーカーとしてラソステロール/TC比を測定すると、順に1.01±0.71μg/mg、0.68±0.23μg/mg、0.54±0.27μg/mgであり、De Novo群はTLR(−)群に対し有意に低値であった(P<0.05)。

 さらに、コレステロール吸収/合成マーカー比(カンペステロール/ラソステロール比)を求めると、TLR(−)群は5.68±5.51、ISR(+)群は5.25±2.81、De Novo群は9.67±7.59と、De Novo群はTLR(−)群、ISR(+)群のいずれに対しても有意に高かった(いずれもP<0.05)。

 加えて、フォローアップ期間の前後におけるLDL-CとApoB48の変化率を3群で比較したところ、LDL-Cは3群とも減少しており特に差は認められなかった。ところが、ApoB48はDe Novo群で約80%増加したのに対し、TLR(−)群、ISR(+)群はともに20%に達せず、De Novo群はTLR(−)群、ISR(+)群に対し有意差が認められた(いずれもP<0.05)。

 以上の結果から森氏は、「空腹時ApoB48とコレステロール吸収/合成マーカー比はPCI後の病変進展の予測因子である可能性だけでなく、CADの2次予防の治療ターゲットになり得る可能性がある」との考えを示した。

(日経メディカル別冊編集)