米Brigham and Women's病院のHoward D. Sesso氏

 50歳以上の男性が毎日複合ビタミンを服用しても、長期の心血管疾患リスクは減少しないことが、1万5000人弱を対象にした大規模試験で明らかになった。これは、米Brigham and Women's病院のHoward D. Sesso氏らが、米国の男性医師を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験「Physicians' Health Study II」(PHII、医師の健康調査II)のデータを分析し、明らかにしたもの。結果は、11月3日からロサンゼルスで開催中の第85回米国心臓病学会・学術集会(AHA2012)で発表された。

 これまでに発表された観察試験では、複合ビタミンと心血管疾患リスクの関連について、一貫した結果は得られていなかった。米国では、成人の約3分の1が、複合ビタミンを服用しており、その額は年間50億ドルにも上ると試算されている。

 PHSII試験は、1997年から2011年6月1日まで、米国の50歳以上の男性医師、合わせて1万4641人を対象に実施した。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群には、複合ビタミンを毎日投与し(7317人)、もう一方の群にはプラセボを投与した(7324人)。

 追跡期間の平均値は11.2年(四分位範囲:10.7〜13.3)、延べ16万4000人・年だった。被験者のベースライン時の平均年齢は64.3歳(標準偏差:9.2)で、無作為化時点で既に心血管疾患歴が認められたのは754人(5.1%)だった。複合ビタミンの服用遵守率は、4年後が77%、8年後が72%、試験終了時が67%だった。

 主要評価項目は、非致死心筋梗塞や非致死脳卒中、致死心血管疾患の統合イベント発生だった。

 その結果、追跡期間中に主要評価イベントが発生したのは、1732人だった。死亡は2757人だった。主要評価イベントの発生は、ビタミン群で876人、プラセボ群で856人、発生率はそれぞれ、11.0/1000人・年と10.8人/1000人・年と、両群で有意差はなかった(ハザード比:1.01、95%信頼区間[CI]:0.91-1.10、P=0.91)。

 心筋梗塞発症率もまた、ビタミン群が3.9人/1000人・年でプラセボ群が4.2人/1000人・年(ハザード比:0.93、95CI:0.80-1.09、P=0.39)、脳卒中発症率はそれぞれ4.1人/1000人・年と3.9人/1000人・年(ハザード比:1.06、95CI:0.91-1.23、P=0.48)、心血管疾患死亡率はそれぞれ5.0人/1000人・年と5.1人/1000人・年(ハザード比:0.95、95CI:0.83-1.09、P=0.47)と、いずれも両群で有意差はなかった。

 Sesso氏は、「複合ビタミン服用の理由は、心血管疾患予防以外ということになる」とし、その主な理由として、依然としてビタミンやミネラルの欠乏の予防である点を挙げた。また、10月17日にJAMA誌で発表したPHSIIの結果で、複合ビタミンを毎日服用することで、癌の発症リスクを8%減少する点にも触れた。
 
 Sesso氏はまた、PHSIIの被験者の6割以上が、週1回以上の運動をし、果物や野菜の摂取量平均も1日4サービング以上と、健康的で栄養バランスの良い生活をしている集団であることを指摘。「栄養状態のバラバラな集団における、複合ビタミンの服用のより長期的効果については、未だに不明だと言える」とした。

 ディスカッサントでNorth Carolina大学のSidney C. Smith.Jr氏もまた、今回の試験の限界点として、「被験者に女性やより若い世代が含まれず、95%が白人で、より長期的効果も不明である」ことを挙げていた。

(日経メディカル別冊編集)