米Chicago大学のTamar S Polonsky氏

 年齢や血圧、喫煙などの従来の冠動脈性心疾患リスク因子高感度C反応性蛋白質hsCRP)と早期冠動脈性心疾患の家族歴を加えたReynoldsリスクスコアRRS)によるリスク予測は、従来のリスク因子だけで行う場合よりも予測がやや改善することが報告された。ただし、リスク層別に再分類してもほとんどの患者は同一層に残った。一方、リスク予測が中程度だった男性では冠動脈性心疾患と心血管疾患の非イベント予測が、女性では冠動脈性心疾患と心血管疾患のイベント予測が悪化することが示された。米Chicago大学のTamar S Polonsky氏らが、11月7日までロサンゼルスで開催されていた第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)で発表した。

 年齢、性別、収縮期血圧、喫煙状況、総コレステロール、HDL-コレステロールなどの従来のリスク因子に、hsCRPと早期冠動脈性心疾患の家族歴を加えたRRSは、冠動脈性心疾患を予測するツールの改善版として提案されている。ただし、RRSがコホート研究で検証されたデータは不足している。そこで今回Polonsky氏らは、地域のアテローム性動脈硬化症リスクを検討し研究(ARIC研究)において、従来のリスク因子にhsCRPおよび早期冠動脈性心疾患の家族歴を加えてリスク予測すると、従来のリスク因子だけでリスク予測した場合よりも良い結果が得られるかどうかを検討した。

 ARIC研究の対象は、1996〜1998年の間ミシガン州に在住していた白人および黒人の成人7240人(男性2945人中白人が2524人、女性4295人中白人が3486人)とした。冠動脈性心疾患または脳卒中の既往がある糖尿病患者は除外した。冠動脈性心疾患は、入院時心筋梗塞、冠動脈性心疾患死もしくは冠動脈血行再建術を施行した場合と定義した。心血管疾患は、冠動脈性心疾患の定義に脳卒中を加えたものとした。

 hsCRPの中央値は、白人男性で1.53mg/L、黒人男性で1.92mg/L、白人女性で2.71mg/L、黒人女性で3.88mg/Lだった。早期冠動脈性心疾患の家族歴は、親が60歳未満で心筋梗塞を発症している場合、と定義した。家族歴陽性率は、白人男性で15.7%、黒人男性で6.9%、白人女性で17.1%、黒人女性で11.7%だった。

 3つのベースモデルで検討を行った。年齢、性別、収縮期血圧、総コレステロール、HDLコレステロール、および現在の喫煙状況による従来のリスク因子を使用するものをモデル1とした。モデル2は、モデル1の因子に、hsCRPのみを加えたものとした。モデル3は、hsCRPと早期冠動脈性心疾患の家族歴を加えたものとした。

 追跡年数の中央値は11年だった。男性2945人中430人(14.6%)にイベントが発生した。男性におけるモデル1のROC曲線下面積(AUC)は0.665(95%信頼区間[CI]:0.642‐0.689)だった。モデル2のAUCは0.672(95%CI:0.651‐0.699)、モデル3のAUCは0.675(95%CI:0.657‐0.701)と、有意差は認められなかった。リスク予測は、hsCRPと早期冠動脈性心疾患の家族歴を加えたモデルでやや改善していた。モデル2のnet reclassification improvement(NRI)は0.016(95%CI:−0.017‐0.100)で、モデル1と比較して、モデル2では有意差は認められなかったもののリスク予測がやや改善した。モデル3もNRIは0.013(95%CI:−0.009-0.109)で、有意差は認められなかった。

 一方、女性は、4295人中253人(5.9%)にイベントが発生した。女性におけるモデル1のROC曲線下面積(AUC)は0.677(95%CI:0.653‐0.6706)だった。モデル2のAUCは0.693(95%CI:0.668‐0.722)、モデル3のAUCは0.694(95%CI:0.669‐0.726)と、男性と同様の結果だった。NRIは、モデル2が0.075(95%CI:−0.015‐0.143)、モデル3が0.092(95%CI:−0.004‐0.164)と、女性でも有意差は認められなかったが、やや改善した。

 次にCox比例ハザードモデルを用いて、従来のリスク因子から冠動脈疾患10年リスク評価を推定し、5%以下、5%超10%以下、10%超20%以下、20%超の4群に分類した。その後、従来のリスク因子にhsCRPと早期冠動脈性心疾患の家族歴を加えて再分類した。従来のリスク因子だけの場合には5%以下と評価されていた男性は46人だったが、再分類の結果、そのうち8⼈は5%超10%以下のリスクであると評価された。5%以下と評価されていた女性1527人を再分類すると、241人が5%超10%以下、2人が10%超20%以下であると評価された。

 同様に、5%超10%以下と評価された男性667人と女性1634人は、再分類の結果、それぞれ41人と312人が5%以下、103人と188人が10%超20%以下となった。10%超20%以下だった男性1427人と女性680人は、再分類の結果、154人と156人が5%超10%以下、147人と36人が20%超となった。20%超だった男性805人と女性111人は、再分類の結果、122人と25人が10%超20%以下となった。リスクを再評価してもほとんどの患者は同一分類に残った。

 一方、従来のリスク因子によるリスク予測が中程度(5%超20%以下)だった対象に、hsCRPと早期冠動脈性心疾患の家族歴を加えたリスク予測を行った場合は、加えなかった場合に比べ、男性では非イベント予測のNRIが冠動脈性心疾患で−0.037、心血管疾患で−0.022と悪化した。女性では、イベント予測のNRIが冠動脈性心疾患で−0.03、心血管疾患で−0.067と悪化した。

 これらの結果からPolonsky氏は、「従来のリスク因子をベースとしたモデルにhsCRPと早期冠動脈性心疾患の家族歴を加えた結果、冠動脈性心疾患リスク予測は少しだけ改善した。ただし、男性では冠動脈性心疾患と心血管疾患の非イベント予測が、女性では冠動脈性心疾患と心血管疾患のイベント予測が悪化した」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)