スウェーデンLinkoping UniversityのTiny Jaarsma氏

 心不全患者の6割もが勃起不能など性の問題を抱えており、また5人に1人は医療側からの情報提供を欲している――。これは、スウェーデンLinkoping UniversityのTiny Jaarsma氏が、11月3日に米ロサンゼルスで開幕した第85回米国心臓協会・学術集会(AHA2012)において「The Need for Sexual Counseling for Cardiac Patients」と題して行った講演で訴えたものだ。

 性機能障害は、心臓病患者によく見られる問題の1つ。しかし、医療従事者は、この問題の重要性を理解しているにも関わらず、性に関する患者の心配事について、患者と話し合う機会をほとんど持ってこなかったのが現状なのだという。看護の側面から心臓疾患の患者に接してきたJaarsma氏らは、こうした現状を打開するために、様々な検討を行ってきた。

 まず、性の問題を抱える心不全患者が、健康な人に比べてどれほどの割合で存在するのかを明らかにした。その結果、全体(n=438)では59%、パートナーのいる心不全患者(n=298)では67%が、また65歳未満の若い患者(n=155)では65%が、それぞれが抱える性的な問題点を報告した。その割合は、それぞれ健康な人々に比べて有意に多いという結果だった(パートナーのいる健康人は58%、P=0.011、65歳未満の若い健康人は53%、P=0.011)。

 多変量解析によると、パートナーのいる心不全患者で性的な問題を抱える要因は、男性(オッズ比[OR]:2.73、95%信頼区間[CI]:1.572-4.753)とβ遮断薬の処方(OR:2.00、95%CI:1.10-3.586)であった。若い患者の場合は、男性(OR:3.21、95%CI:2.099-4.908)とパートナーの存在(OR:2.00、95%CI:1.283-3.110)であった。

 Jaarsma氏らはまた、退院した心不全患者を対象にアンケート調査を行い、性的活動とQOLについて明らかにした。それによると、退院後1カ月で、患者の48%(n=380)が性的活動の困難さを自覚していた。そのうちの70%が18カ月後も同じ問題を抱え続けていた。一方、退院後1カ月の時点では問題点を感じていなかった患者でも、18カ月後までのフォローアップ期間中に27%が性的問題を自覚するようになっていた。こうした性活動の困難さを自覚している患者では、問題のない患者に比べてQOLが有意に低いことも明らかになった。

 性的問題を抱える心不全患者がどのような情報を必要としているのか調べた研究では、心不全患者の性的問題について医療側から説明があったと回答した患者は9%しかいなかった。5人に1人は、心不全に関連する性的機能障害についての情報提供の必要性を訴えていた。必要とされる情報の中身は、一般的な情報とアドバイスに加え、心不全患者にとっての危険な性行為、パートナーのための情報、勃起障害を改善する治療の可能性とリスク、性的障害の予防など、多岐にわたるものだった。

 Jaarsma氏はこれまでの研究成果を振り返り、心不全患者では性的な問題は一般的であり、その原因の多くが心不全に伴う症状によるものだと指摘した。その上で、彼らは医療側からのアドバイスを求めているとし、「性的な問題を抱える心不全患者の適切な治療と教育が必要とされている」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)